第5話 王都で報告

 休憩後、私たちは馬車に揺られ、王都に戻ってきました。塞ぎこんでいたタバタ様も王都の景色を見て、少しは気が紛れているようです。

 王都は、森との境界に木の柵を巡らし、広大な畑が広がっています。その先には1門目の高い石塀に囲まれた区画があります。主に庶民の住居や商店があります。2門目は1門よりは低いですが、こちらも石塀です。ここは主に貴族や政務の場所があります。3門目は1門より高く厚い石塀で王城があり、王族の方々の住まいになっています。王都は丘の上にある王城を中心に扇状に住居や畑が広がっています。

 畑の中の道を通り、1門、2門を抜けます。この馬車は政務用の馬車なので1門、2門は素通りで止められることはありません。

 馬車は2門を抜け屋敷の一つに停車しました。王城で管理する屋敷の1つです。ここは他国や王都に屋敷を持たない遠方の領主が王都に来た際に貸し出される1軒ですが、元々は、以前の異国人の為に用意された屋敷です。王城で所有していますので執事やメイドが管理人として常駐しています。とは言っても執事が1人とメイドが2人です。馬車が来たことに気づいた執事が屋敷門を開け、執事とメイドが門の脇に並び私たちを出迎えました。

「ようこそおいで下さいました」

「フランツ、こちらはタバタ様です。ここに、しばらく滞在しますのでよろしく頼みます」

「ダカン様、畏まりました」

 執事のフランツにタバタ様を託しました。取調官と私は宰相にご報告に向かわねばなりません。

「タバタ様、こちらが執事のフランツ、メイドのメアリーとエミリアです。私たちは王城に行ってまいりますので、この家でお寛ぎください。夕方頃には戻れると思いますので、晩餐をご一緒しましょう」

「はい。すみません。ありがとうございます」

 特に謝られる事はしてないと思うのですが、ニホンの特徴でしょうか。取調官と私は馬車に乗り王城へと向かいます。


 3門で衛兵に要件を伝え王城に入りました。馬車を降り、長い廊下を右へ左へと進みます。宰相の執務室前の衛兵に要件を伝え、声が掛かるまで廊下で待機します。我々文官は一般官僚よりも王や宰相に会いやすい位にいますが、それでも予定というものがあります。急に行って直ぐに会える訳では無いのです。待機すること暫し、声が掛かりました。部屋に入ってすぐに宰相から声が掛かりました。

「どうだった?」

「はい。異国人で間違いないかと思います。こちらが報告書となります」

 フローラン取調官が答え、報告書を差し出しました。

「そうか」

 宰相は顎髭あごひげを摩り、何か考えているようです。

「王には報告しておこう。異国人は屋敷に?」

「はい。2号館の方に滞在して頂くようにしました。こちらのダカンと話が合いますようなので、今後の異国人についてはダカンを担当にと思っております」

 取調官に推薦していただきました。これは僥倖ぎょうこうです。私の祖先も異国人と関係があったようです。

「そうか。ダカン、異国人は何が得意なのかを調べ、王国が繫栄するように手筈を整えてくれ。以前の異国人は文献によれば農業指導や魔道具製作をしていたようだ。今回の異国人も王家が後ろ盾になると思うが、異国人との連絡を密にしてくれ。今後の事は、後日、連絡する」

「はい。畏まりました」


 こうして私はタバタ様担当となり、後に秘書としてタバタ様のお仕事の補佐と王城との連絡を取り持つようになりました。

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