第17話 魔道具でトウフを作る

 魔道具が研究小屋に納品された翌日、前日に仕込んだ大豆を潰し試運転を行いました。回転体の隙間や回転速度の調整で時間をとられましたが、良い感じに潰せるようになりました。桶にトウニュウと大豆カスが溜まってきます。先日、手作業で潰し疲れたのは何だったのかという程、楽です。魔道具の改良点として少し水漏れがあるようです。この辺は接合を工夫してもらって抑えたいとメモしておきます。

 ザルに布を引き、桶のトウニュウををいれ、カスを漉していきます。カスは別の桶に入れ、後で料理人に調理してもらいます。先日食べたオカラ炒めが美味しかったです。

 トウニュウを鍋に入れ、温度に注意しつつ火の魔道具に掛け、ニガリを投入しかき混ぜます。固まってきたら木枠に入れますが、今回の木枠は特注品です。先日は試作なので有り合わせの物でしたが、販売を考慮し、特注の枠を作って貰いました。1度に9つ出来るように枠の中にスジを入れ、切った時の大きさが同じになるようにしてあります。そして同じサイズの木蓋と重しも同じものが出来るように同量の物を数個、準備してあります。

 重しをして待つこと暫し、トウフが出来上がりました。桶に木枠をいれ、トウフを取り出します。スジにそって包丁をいれ切り分けます。同じ大きさになっています。味見をします。先日と同じく美味しく出来ているようです。


 さて、問題はここからです。どのようにお店で売るのかです。トウフは崩れやすく、手で持って帰るのは難しく、ぶつければ粉々になります。なので水に入れたまま持ち帰っていただくのがようのですが・・・。

「鍋を持参で買いにきてもらえばいいんだけどね。そうすれば水に入れたトウフを売れるんだけど」

 タバタ様の案です。買い物に行くのに自前の袋を持っていきますから、トウフ用に鍋を持ってきてもらうのは良いかもしれません。貴族や商家はメイドが買いに来るでしょうから問題無いように感じます。

「最初は売れないだろうから、試食してもらってからの方が良いかな」

 そうですね。王国で初めての食べ物ですからね。味が分からなければ買えませんよね。市場の漬物屋も試食を出してましたから良いかもしれませんね。

「お店で売るのに、トウフだけだと寂しいからオカラ炒めも売るようにするのはどうかな」

 それは良いですね。トウフを作れば、大量のオカラが出来ますから売るのは良いと思います。元が大豆ですから健康にも良いでしょうし。

 もう少し魔道具を使用したいと思いますので試作を続けます。改良のメモを魔道具士に渡して5台、作って貰いましょう。お店の場所はまだ決まっていませんが、タバタ様専用の工房も作られ始めています。新しい5台の魔道具は、そちらに納品してもらうように調整して貰いましょう。まぁ、工房の作業員と言いますか、料理人もまだ決まっていませんけどね。


 今回試作したトウフは試供品ということで、友人、知人、魔道具士や棟梁にも試食してもらいましょう。お屋敷だけで食べるには量が多いですし、味の感想なんかも聞きたいです。

 まずは魔道具士の工房にお邪魔します。私とメイドで鍋にトウフを入れ持参しました。

「先日の魔道具で作ったものです。大豆から作られたものですが、試食してみませんか」

「おぉ!こりゃいい。豆の風味が良いし、ツルっと入るのがまたいい」

 試食は良好な様です。

 次に棟梁のところにお邪魔しました

「研究小屋は良い感じです。大豆から作ったものですが試食でお持ちしました」

「味は良いが、食った気がしないな・・・腹に溜らん」

 肉体労働者の方だと仕方ありませんね。豆の汁ですからお腹には溜まらないでしょうね。

「では、こちらはどうでしょう」

 私はオカラ炒めを出して勧めました。

「これは酒のつまみにいいな。もうちょっとピリ辛でもいいな」

 こちらは良好なようです。なるほど、お酒のつまみですか。ピリ辛ですね。考えておきましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私たちの王国には異国人がいます。秘書ブルーノの回顧録 森野正 @morinoma

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ