第16話 研究施設と魔道具
宰相と打ち合わせして数日後。
魔道具士の方が屋敷を訪れました。魔道具とは魔物の魔石を利用して機械を動かしたり、火や水をだしたりする便利な道具です。この道具を専門に製作しているのが魔道具士です。魔道具士にもランクがあり、試作や検品を行う上級魔道具士と量産を行う下級魔道具士になります。今回の魔道具士は試作を行う上級魔道具士です。
「初めまして。魔道具士のドナルド・ベイリーと申します。何か作りたいものがあると宰相様からご連絡を頂きました」
「初めまして。こちらはタバタ男爵。私は秘書のブルーノといいます。早速ですが、このような物の製作をお願いしたいのですが」
私はタバタ様と打ち合わせした設計図といいますか、必要な機能を盛り込んだ絵を魔道具士に渡しました。
「機能としては、上に物を入れ、豆なんですけどね、下の回転するところで、
「小麦粉の魔道具と同じような仕組みで回転する所が違いますね。最初はという事は、後で追加が出るということですか」
「これで商品の材料を作るんですが、商品の売れ行き次第で台数を増やす予定でいます」
次に訪れたのは土木建築の棟梁です。
「建築士のランベルです。先日はどうも」
「棟梁。ありがとうございます。こちらはタバタ男爵です」
棟梁と私は昔からの知り合いなのでラフな感じですが、タバタ様は初めましてです。屋敷から庭に移動して場所と大きさなどの打ち合わせをします。棟梁に簡単な位置どりの図面を渡して検討してもらいます。
「フムフム。大きさは4ヒロの10ヒロぐらいですね。倉庫は1面に棚が必要と、厨房は水場と火場と大きめのテーブルに椅子4脚、1面に棚ですね。水と火は魔道具ですか」
「水、火は魔道具の予定です。棚の下に小物を仕舞える引き出しを付けて貰ってもいいですかね」
「そうすると排水はこちらに回して。入り口はこことここに。窓はこの辺でどうでしょうか」
「はい。それでお願いします」
「では、明後日から作業に入ります」
流石、棟梁です。話が早いですね。魔道具の試作が出来上がるぐらいには研究小屋も出来上がりそうです。
「棟梁。倉庫の建築が終わったら、奥の東屋の改修もお願いします。経年劣化で傷んでいるところもあると思うので念入りにお願いします。改修の内容はこれから考えます」
「はい。分かりました」
棟梁と打ち合わせ後にタバタ様を東屋にご案内しました。
「ここは以前の異国人が晩年、生活されていた家です。少し狭いですが、落ち着くという事で、こちらをご利用されていたようです。この家は、ここで靴を脱いで上がります」
王国の人間であれば自室以外では靴を脱ぎませんが、タバタ様は
「この部屋の作りは異国とは少し違うようですが、ワシツと言っておられたようです。材料が無いとかでタタミ風の作りだそうです。そちらの扉から外に出ますと、エンガワなる板敷の場所があります」
タバタ様は床に敷かれたタタミを触り懐かしんでいるようでした。そして扉を開け、外にあるエンガワを見つめました。
「隣の部屋は板敷ですが、ヨウシツと言うそうでベッドを置いて寝室にしていたようです。それと台所とトイレ、小さいですが倉庫があります。台所の扉は屋敷に繋がっていましてメイドが行き来できるようになっております」
「うん・・・懐かしい・・・このぐらいの家は落ち着きます」
タバタ様は少し涙ぐんでいるようでした。やはり故郷と同じような作りは落ち着きますよね。
あれから1週間が経ちました。タバタ様と私は市場で研究に使用する野菜や調味料、調理器具などを購入し、建物と魔道具が出来上がるのを待っていました。
建物が完成し棟梁から引き渡しが行われました。
「おぉ。これは素晴らしい」
「ありがとうございます」
小屋の中を見て回り、タバタ様も感激しております。屋敷の厨房で料理人の邪魔をすることなく自由に研究が行えます。新しい食べ物にも期待が高まります。
そして発注していた魔道具も出来上がり、研究所に搬入されました。思っていたよりも大きい感じになっていますが、試作なので良しでしょう。
「これが始動のボタンです。ここを回すと回転する速さが調整できます。潰すところの隙間はここを回して、潰すものの大きさに合わせて調整します」
早速、試運転と行きたいところですが、材料の準備が出来ていません。取りあえず、使い方を聞いて、明日以降に試運転してみようという事になりました。
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