トウフ
第14話 報告と領地
南部領から王都に戻ってきました。高い塀に囲まれた、私にとって見慣れた街並みは落ち着きます。南部領は収穫の多い見学でした。明日、宰相に報告と相談に向かわねばなりません。
宰相へのお土産を手に王城へ向かいます。お土産は今回製作した『塩』と『紙』です。宰相がこれを見てどのような反応をするのか楽しみです。まぁ、紙は他国の紙と見比べ、塩は味見する程度でしょうか。それでも王国で製作できる意義は大きいと思います。新規工房の建設も提案する予定ですが、これも2品をみれば問題ないでしょう。と言いますか、もっと大規模な物をと言うかもしれませんね。
宰相への相談は、タバタ様が南部領に屋敷と農地が欲しいと仰ったこと。屋敷に関しては問題無いでしょうが、農地はどのように判断されるかわかりません。領地として領民込みで村を与えるのか、単に農地込の広めの屋敷になるのかです。
屋敷で思い出しましたが、今のお屋敷に研究用の小屋が欲しいと言ってましたね。これも相談しないいけません。調理の出来る場所と保存する倉庫だそうで、新しい食品を研究するそうです。これは直ぐに許可が出そうです。そう言えば、まだタバタ様に東屋を見せていませんでした。きっと驚くに違いありません。
それに以前の異国人の報告もしないといけません。南部領に現れたというお爺さんは、村人たちの話を聞く限り、異国人で間違いないだろうと私は思っています。
宰相の待機部屋で報告、相談の段取りをしていると侍従に呼ばれました。面会時間が来たようです。
「どうであった?」
「タバタ様は生産や加工に詳しいようです。こちらが今回の成果品で、まだ実用段階ではありませんが、確認のためにお持ちしました」
私は紙と塩を侍従に渡し、宰相が確認しています。
「この紙は何から?」
「はい。それは麻が原料になっています。麻布と同じ加工法ですが、途中から粉砕して、梳くという工程を経て乾燥して紙になります。ただ、量産するには原料の麻栽培を拡充する必要があるかと思います」
「これが塩か。いつもの塩とは違うようだが味は悪くない」
「はい。原料は海の水で塩を取り出すまでに時間が掛かりますが、海の水は大量にありますので、定期的に塩を入手できるようになります。今は試作という事で1施設だけですが、作業者が熟練してくれば施設数を増やす方向で考えております」
「そうか。分かった」
「以前の異国人ですが各地の領地に赴いて農業指導をしていたような形跡があります。今回の南部領でもコメや野菜の指導をしていたようです」
「王城にも細部の資料がないが今後も分かったことがあったら報告してくれ」
「はい。別件ですが、タバタ様が今のお屋敷に研究用の施設といいますか、小屋を1つ欲しいそうです。新しい食品を研究するそうです。それと南部領で自身で農作業をされたいとの事と、南部領にもお屋敷と農地が欲しいそうです」
「今の屋敷は構わんが、南部領にもか・・・分かった。検討しよう」
「よろしくお願いいたします」
宰相との面会は終わり、私は退出しました。
宰相の考え方次第ではありますが、南部領の農地については、異国人への便宜をはかる上で何かしら与えられるとは思います。タバタ様にも言いましたが、王都から南部領にお屋敷を移すというのは難しいと思いますので、お屋敷を2つ持ち行き来する生活になるかと思っております。
お屋敷に帰る前に、研究用の小屋を依頼しないといけませんので、土木建築の棟梁の所に寄って行きましょう。時間が出来たら屋敷に来ていただいて、タバタ様が必要とする小屋の内容を打ち合わせして、早急に建ててもらいましょう。
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