第12話 コメとコウジ

 今日はコメの村の見学です。南部ドミニオン領は、以前、市場で購入したコメの産地です。あのコメはタバタ様が料理人に調理の仕方を教えて、何度か、お屋敷でも食べましたが、美味しかったです。

 こちらの領ではタバタ様の食べ方とは違いますが、魚貝が入っていたり、香辛料を使っていたりして、どれも美味しいです。

 馬車に揺られること暫し、村に到着しました。石塀で囲まれた村の中には、大きな塔がいくつもあり、刈り取り、乾燥させたコメを一時保管する塔だそうです。保管したものを村の脇にある川の水を利用した水車で脱穀だっこく、精米するようです。『田んぼ』と言われる小区画に分けられた水の張ってある畑が村の周囲に無数に存在しています。小麦は冬植えの初夏収穫ですが、コメは初夏植えの秋収穫なので、この時期は、まだ小さいですが緑の葉が風に揺れています。

 タバタ様は麦わら帽子を被り、田んぼ見て回りながら村長と話しています。麦わら帽子はドミニオン領では馴染が有りませんので目立っています。ドミニオン領の農作業時の帽子は三角の硬いもので稲わらで出来ているのもが一般的なようです。

「この田んぼは、正条植えですが昔からですか?」

「いえ。数百年前に村を訪れた老人から、この植え方の方が風通しが良く、収量が増えるからと教えて頂いたそうです」

「そうですか・・・。除草が大変じゃないですか」

「除草の手間はありますが、田んぼの中で使う道具も教えてもらって使っています。あぁ、今、村の者が作業するのにきました」

 2本の棒の間に小さな車輪の付いた道具をもった村人が数人、作業をするのに訪れました。あの道具で何をするのでしょうか。と思っていると、田んぼの中に入っていって、コメの苗の間に道具を置き、ガシャガシャと押し始めました。何をしているのか私にはわかりませんが、タバタ様が頷いております。

田車たぐるまがあるんですか」

「知っているんですか?草が小さいうちに作業すると効率が良いそうなんですよ」

 タバタ様と村長は楽しそうに話を続けています。私には話の内容が殆ど分かりません。


 田んぼの見学を終えた私たちは、村長宅の庭で食事をご馳走になります。今日は、天気も良く、過ごしやすい気温なので庭でということらしいです。テーブルには、この村で採れたコメや野菜を使用した料理が並べられています。

 三角のコメの塊と思われる物は何でしょうか。茶色の物が塗ってあり、焦げ目が付いています。それと白い液体がカップに入っています。お皿には、先日、王都でも見たタクアンやカブの漬物、あと、緑の皮が付いている白いものが切って並べられています。緑の皮の物は何だか分かりませんが、新しい野菜でしょうか。

「おぉ!ミソオニギリにタクアン、カブ、キュウリの漬物。この液体は・・・アマザケですね。ミソはムギミソなので好みにもよりますね」

 タバタ様は、全て分かっているようですが、王都には無いものばかりです。準備して頂いたので、さっそく頂きましょう。

 まずは『ミソオニギリ』と言われる三角の茶色いものから。口に入れるとコメがホロっと崩れ、ミソと言われるものの塩味に香ばしい焦げ目が何とも美味しい。このミソは独特の風味がするので嫌いな人もいるでしょうが私は好きです。

『アマザケ』と言われる白い液体を一口飲みます。口に広がる香り、何とも言えない甘さ、初めて飲みましたが美味しい。タバタ様が言われるには、栄養価が高いそうで健康に良いそうです。私には栄養価が何かわかりません。

 次は漬物に行きます。タクアン、カブは王都でも頂きましたので、『キュウリ』と言われる緑の皮を食べてみたいと思います。何とも言えない味ですね。これは『ヌカズケ』なる物だそうで、ヌカなるものの味だそうです。独特な味すぎて私は苦手です。


 タバタ様が村長とミソをどの様に作っているのか話をしています。村長の話ではミソは専用の小屋に入れて熟成させているようです。タバタ様は『コウジ』というものが欲しいようで、村長に『稲玉いねだま』か『コメコウジ』を作ったら譲ってもらう話をしています。そもそも『稲玉』『コメコウジ』って何ですかね。

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