第11話 塩とニガリ
ドミニオン領主との打ち合わせは、タバタ様が異国人であること、今回の見学の目的、必要となる道具や機材の設計図は事前に渡してありますので、出来上がっている機材の確認と、どの順番で、どこを回るのか、何日ぐらいで結果がでるのか等なのでスムーズに進みました。
コメは領都の南部で栽培が多いそうで、海に先に行って塩の設備を整えてから領都に戻り、コメの見学に行くことになりました。
海の村に移動し、機材の設置と作業の指示になります。風通しの良い浜辺で、タバタ様は小穴の開いた
海水は濃くするのに数日かかりますので、本日は漁港に来ています。ドミニオン領で1番の漁港というか、王国で1番の漁港です。今は昼近くなので朝の漁を終えた、大小さまざまな船が数えきれないくらい停泊しています。魚の荷揚げも終わっているようで、漁港にいる人はまばらです。お店を覗くと大きなタライの中で魚が泳いでいます。赤い大きな魚、小さい魚、さまざまな種類がいるようです。私は魚に詳しくないので名前は分かりません。別のタライには貝が入れられています。こちらも縞模様の奇麗なのとか、大きいの小さいのがいます。
お店から少し離れたところでは火が焚かれ、魚や貝が焼かれています。魚は火魔道具より直火の方が良いのでしょうか。魚の焼ける匂いが食欲をそそります。タバタ様も私と同じように焼き魚を気にしています。これは食べるしかありませんね。
魚貝の焼き場は石を組んで作ったカマドに鉄の細板を平行に並べて、下から火で炙っています。板の隙間から炎が出ています。炎に炙られ、魚貝が良い感じに焦げて、良い匂いがします。大きめの魚と貝を1つずつ2皿購入し、近くのベンチに腰かけてタバタ様と試食します。魚は程よく焼けたさっぱりした白身で、貝は波型の蓋のついたものです。タバタ様が言うには、魚はタイで貝はホタテだそうです。どちらも美味しいです。この外で焼く感じは王都では無理なので、あぁ、でもお祭りの時は外で焼いてましたね。護衛の騎士も一緒に魚貝を
漁港を堪能したりして2日後。海水の方は指示した作業が終わっていました。平鍋に濃くなった海水を入れ煮ていきます。焦がさないようにヘラでかき混ぜつつ、水分を飛ばしていきますが、水が減ったら濃い海水を足しての作業の繰り返しです。半日ほど繰り返すと白いものが目だってきました。そして夕方には水分は少なく、白いものは多くなっていました。残った水分をタバタ様は壺に
「苦!・・・何です?」
何ですかこれは、非常に苦いです。壺の中身はニガリというもので、以前にタバタ様が言っていたトウフの材料になるようです。白い方が塩という事で、火を止め、平板に移して乾燥させるようです。こちらも味見してみましたが塩です。すばらしい。ただ、いつも食べている塩とは少し味が違うようで、タバタ様が言うには、いつものは岩塩で、これは海塩だそうで、山と海の違いが、味の違いだそうです。
今回はお試しという事で量が少ないですが、数日間、海水を濃くする作業をして、1日から2日掛けて煮詰めていけば塩が手に入るようになります。王国にとって塩は重要なので定期的に入手できるのは、とても有意義です。王国の産業として大量に生産できるのであれば、他国に輸出することも出来るようになると思いますので、タバタ様の王国への貢献度は高いと思います。
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