第9話 食事後の市場
昼食を終え、午後も市場を見学します。さて、どこへ行きましょうか。市場ですからブラブラ歩くだけでもタバタ様は色々見つけます。
この辺は、小麦や大麦、ライ麦を扱うところのようです。タバタ様は袋にいれられた麦を熱心に見ておられます。
「この麦は仕入れたものですか」
「そうです。東のハフミスタ領から持ってきたものです。あそこの小麦は風味があって美味しいのよ」
「1つください。それとコメってあります?」
「コメは、これだね」
「おぉ!コメも1つください。コメはどちらから?」
「コメは、南のドミニオン領からよ。王都じゃ、あまり売れないから、仕入れは少ないよ」
タバタ様がこちらを見ました。分かりました。ドミニオンですね。視察に行けるように予定しておきます。タバタ様は小麦とコメを購入しました。王都でコメは馴染が無く、私も食べたことがありません。白いツブツブですが粉にしてから食べるのでしょうか。
次に訪れたのは、豆の専門店のようです。私が分かるのは、れんず豆、大豆、そら豆、えんどう豆ぐらいですが、他にも色々あるようです。とても彩りが鮮やかに見えます。豆類は200年程前に栽培が開始され、市場に出回るようになったものです。
「この大きいのは、どやって食べるんですか」
「知らないのかい。れんず豆はトマトと一緒に煮て食べるんだよ」
「へぇ。これは」
「大豆も同じさ、煮てたべるのさ」
「トウフにはしないんですか」
「トウフ?知らない名前だね。新しい豆かい?」
「いえ。大豆から作る食べ物です」
また新しい言葉がでました。『トウフ』なるものも、聞いたことがありません。
「ブルーノさん。王国に海はありますか」
「南部のドミニオン領に海があります。コメもそこで栽培されていますが行きたいですか?」
「コメも見たいので出来れば行きたいですが、無理なようであれば、海の水・・・海水が欲しいですね」
「海水、そのものですか」
「海水というよりは、海水を加工した物が欲しいんですけどね。あれ?塩はどこで作っているんですか」
「塩は北部のヒベレス領の山で産出するので、そこから運んできています」
「あぁ、岩塩なんですね」
「んん?海水から塩ができるんですか?掘るより簡単ですか?」
「出来ますよ。掘るより・・・どうでしょうか。工程がいくつもあって手間が掛かりますけど」
おぉ。これは良い事を聞きました。海水から塩が出来るのであれば、海水はいっぱいあります。手間がどの程度なのか分かりませんが、塩は王国にとって重要です。
「店主、この豆は昔から、この辺で栽培されていたのですか」
「昔、苗を持ったお爺さんが来て、教えてもらったって話だったよ。それから村で豆を作るようになったって」
「そうですか。ありがとう。大豆を2袋と小豆を1袋ください」
100年前・・・ここにも異国人の気配があります。以前の異国人も農業の専門家だったようなので有り得ます。
今日はこのぐらいでという事で、お屋敷で晩餐前ですが、購入品の試食会が始まりました。と言っても漬物だけなんですけどね。タクアンは保存食と言っていましたが、歯ごたえがあって美味しいですね。カブがピリッとした味のアクセントがあってエールに合いそうです。
タバタ様が料理人に、豆の煮込みのリクエストしています。今日の晩餐の調理は終わっているようなので、後日という事でしょうね。どちらの料理もこの国に住んでいるものであれば、良く食べる料理ですが、タバタ様は異国人ですから馴染が無くても不思議ではありません。
それから、このお屋敷の関係者は全てタバタ様が異国人であることを知らされています。タバタ様が疑問に思ったことは、この国で常識だったとしても、お答えするようにと指示がでています。
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