第8話 食事

 市場を見て回っていうちに良い時間になりましたので、食事をしたいと思います。タバタ様は食事で好き嫌いは無いようですので、私が以前来て美味しかった食堂へ行こうと思います。貴族が行く食事処ではないのですが、タバタ様には知っていて欲しいお店です。

 お昼時という事もあり、お店の中はそれなりに人がいます。庶民の食堂なので個室はありません。テーブル席に座り、メニューは壁に書いてありますので、そこから選んで注文します。

「おすすめは、肉シチューとソーセージ、それとエールになります」

「えぇ。エールがあるの?」

 タバタ様はエールを知っているのでしょうか。お屋敷での食事ではワインが出ますが、庶民にはエールの方が馴染があると思います。という事で、シチュー、ソーセージ、エール、パンを注文しました。昼食には少し多かったかも知れませんが、たまには良いでしょう。


 先にエールが来ましたので飲みます。うん。美味しいです。タバタ様も美味しそうに飲んでいます。

「エールは初めてですが、フルティーで美味しいですね」

「お口に合って良かったです。お国にはエールは無いのですか」

「エールはありませんでしたが、似たもので、ビールがありました。たぶん、作り方が違うんだと思うんですけどね。ビールは良く飲んでました。ワインよりもこれの方が馴染がありますね。」

 タバタ様の国にも似たものがあったようです。これはお屋敷にも取り寄せた方が良いようですね。私もたまに飲みたいです。


 次にソーセージとパンが来ました。ソーセージは豚と羊の2種類です。どちらも王国の領地で飼育しています。塩と胡椒、あと何かの香辛料が入っているようで茹でたものがパリッとして美味しいのです。

「おぉ。これも上手い」

 タバタ様がお慶びで私も嬉しいです。私も食べます。この香辛料の感じがエールに合い、とても美味しいです。羊の腸に香辛料を混ぜた肉を詰めるというのは誰が考えたのでしょうかね。これも以前の異国人でしょうか。美味しいものが食べれるのは良いことです。

 シチューがきました。肉と野菜を香辛料と水で煮たものです。たったこれだけなのに美味しいのです。香辛料の組み合わせが良いのでしょうか。タバタ様も美味しそうに食べています。

 大きめに切られた肉、ジャガイモ、人参、それにこの緑の野菜は何でしょうか。以前に来た時には入っていなかったと思いますが、色が鮮やかになっています。

「それはブロッコリーだね」

 私が不思議そうな顔をしていたのが分かったのでしょうか。タバタ様から教えて頂きました。緑の野菜はブロッコリーと言うそうです。


 食事を終え帰ろうとしたとき、タバタ様に給仕と何か話しています。私が会計を終えて戻ってくると、タバタ様は料理人と楽しそうに会話していました。何を話されているのかは分かりませんでしたが、最後に料理人と握手をして笑顔で私の所にきました。タバタ様は不思議な方ですね。何を話していたのかは気になりますが、タバタ様が話し出すまで私からは聞きません。私は補佐ですから。

「シチューは美味しかったけど、何か足りない気がしてね。それで料理人と話してたんだ。ワインを少しとローズマリーとかローリエを入れると、もっと風味が良くなるって話をしてたんだ。それで料理人と話が合っちゃてね、最後はあんな感じ」

 お店を出てタバタ様が先ほどの料理人との話をされました。タバタ様は作るだけではなく、料理にも詳しいのですね。新しい食材だと食べ方が分からなければ美味しくいただけませんもんね。

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