第16話:あたしは王子様と結婚する運命なのに
サンドリアは泣き叫んだ。
「あたしだけ責めるなんてひどいわ!!」
リーディングが静かに告げる。
「あなただけではありません。不正を行う者全てに罰が下されるのです」
サンドリアは泣き崩れた。
しかしダイモス学園長が容赦なく進める。
「次はライラ・ダルア侯爵令嬢とサンドリア・シャルム嬢の乱闘事件です。順に話をお聞きしたいと思います。まずはキャメロン・サンダース伯爵令嬢」
「はい」
淑やかにキャメロン・サンダース伯爵令嬢が立ち上がる。
「あなたは二人の乱闘現場に居合わせましたね」
「はい。わたくしはあの時、ライラ嬢と行動を共にしておりましたから最初から目撃しております。シシリア・ロンダム子爵令嬢も一緒でした」
シシリア・ロンダムが頷く。
「どのような成り行きで乱闘に至ったのか話してください」
キャメロンはしゃんと背筋を伸ばして話し始めた。
「あの日、渡り廊下でサンドリア嬢と偶然お会いしました。ライラ嬢はサンドリア嬢に『どうかお祖母様のハンカチを返してください』とお願いしたのです。これは以前から度々お願いしていたのですが、いつもサンドリア嬢は興奮されて、『あんた、なに嘘ついてるの』と笑い、『あたしは求婚されたのよ』などわけのわからないことを言って拒否されたのです」
一拍置いて続ける。
「いつもはサンドリア嬢が逃げ去るのですが、その日は急に激高されました。そして『いつもしつこいのよ!痛い目に遭わせてやる!』と叫んで、ライラ嬢に飛びかかってきたのです。ライラ嬢は突然のことにそのまま押し倒され、馬乗りにされて顔を何度も殴打された後、髪を引きちぎられました」
「ライラ嬢は抵抗しましたか?または反撃は?」
「いいえ、圧倒されたのか、ただされるがままで、髪を引きちぎられ始めた時にようやく悲鳴を上げられました。わたくし達も圧倒されて最初はおろおろするばかりでしたが、シシリア嬢と共にサンドリア嬢を引き離そうとしても力が及びませんでした。そこでここにいらっしゃるアイリス・エンドロン嬢に助けを求め、カミーユ・ミルドレッド嬢が人を呼びに行ってくれたのです」
「シシリア・ロンダム子爵令嬢、今の証言に間違いはございませんか」
「はい」とシシリア。
「アイリス・エンドロン嬢はいかがですか」
「間違いありません。私達も偶然居合わせて、最初から見ていました」とアイリス。
「カミーユ・ミルドレッド嬢はどうでしょうか」
「私が警備の者を呼びに行きました」とカミーユ。
「サンドリア嬢、何か反論はありますか?」
サンドリアはきっと四人を睨みつけた後、ライラに向かって喚いた。
「あんたがハンカチ一枚に拘るからいけないんでしょ!何よ!ハンカチなんて幾らでも持っているお貴族様のくせに!!」
ライラは静かにサンドリアに向かった。
「何度も申し上げたように、あのハンカチは祖母の形見なのです。あなたは何度言っても聞いてくださらなかったではありませんか」
「なによ!あたしが全部悪いって言うの!?」
激高するサンドリアにダイモス学園長が割って入る。
「サンドリア嬢、あなたはまだわからないのですか」
そして静かに告げた。
「学長権限を以って、サンドリア・シャルム嬢を放校と致します」
場が静まり返る。
「放校って何よ!!」
サンドリアが叫ぶ。
「あたしは貴族なのよ!!」
「後の処分は文部大臣のシュミット・マリアーニ伯爵にお任せ致します」
サンドリアは泣きながら言い続ける。
「あたしは王子様と結婚する運命なのに」
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