第6話:発見:焦眉の急

「ここはナルデナ公爵邸だわ」

 シルアが息を呑んだ。

「少しわかったかもしれません」

 シルアが言う。


「ナルデナ公爵家には三人の令息が居て、王位継承権第一位から第三位なのです。このまま国王が世継ぎを成さなければ、長男のカイルが王位に就くのです」


 シルアは眉をひそめながら言う。


「でもわからないわ。なぜ女子生徒達が関係するのかしら」

「しっ!」デーティアはシルアを止めた。

「行方不明の生徒の居場所がわかりました。この屋敷の地下です。エリザの部屋の傍」

 シルアの顔色が変わる。


「まさか彼女達もエリザと同じ目に!?」

「いいえ」デーティアはシルアの手を握って、自分に見えているものを伝えた。


 女子生徒五人は、エリザよりマシな部屋に居たが、魔法で拘束されており意識がなかった。


 最初の事件から一か月、最後から半月経つが、健康上は問題がなさそうだ。

「これはおそらく時を止めているのでしょう」

 シルアが推察する。

「着衣の乱れもなく、衰弱もしていません。なんのために…」

 そこでシルアははっとなった。


「媒介だわ!」

 シルアの唇が震える。


「五人を媒介にして何かを…」

 ここで考え込んでから遠慮がちに呟く。


「アンダリオが去勢された時の魔法と同じだわ…」


 シルアは語った。

 宮廷魔導士になるための不妊の儀式には、神殿の無垢な乙女巫女を媒介にしてその力を封じるのだと。


 考えられることはひとつだけ。

 国王を不妊にして、未来の王位を狙っているのだ。

 世継ぎに恵まれなければナルデナ公爵家の長男が王位を継ぐことになる。


「これは明らかな謀反です」


 シルアは魔力の素を練り上げて、一羽の白い鳥を出現させた。

「アンダリオ、事は重大です。ナルデナ公爵家に行方不明の娘達が居ます。謀反です。国王の不妊の儀式を行うつもりです。わたくし達はナルデナ公爵を焚きつけて儀式を早めます」

 鳥に向かって一気に言うと、鳥は部屋の窓をすり抜けて飛んで行った。


「さあ、わたくし達も行動に出ましょう」

 しゃんと姿勢を正したシルアに、デーティアは呆然とした。

 行動とは?


「あなたを囮にしてナルデナ公爵を唆して現場を押さえるのです。儀式の準備が整う頃には、王宮から援軍が来ます」

 デーティアはまだ呆然としていた。

 たったあれだけの伝言でどうして言い切る自信があるのだろう?


 師匠に逆らう間もなく、デーティアは学園からナルデナ公爵家の町屋敷へ向かった。

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