第5話:探索:鵜の目鷹の目
「ああ、なんてこと」
シルアは頭を抱えた。
「まさかメイドが関わっていたとは」
一見、捜査は暗礁に乗り上げてしまったかのように思えた。
エリザは消えてしまったのだ。
「エリザが男だったのか、それとも手引きをした女のかは、あたしにはまだわかりません」
デーティアは視線を宙に向け唇を人差し指でトントンと軽く叩きながら考え込んだ。
「多分…」
少しして続ける。
「エリザが魔法を使えるのならば、使った時にはわかります」
きっぱりと言い切る。
「ただ、術者は確実に男ですし…」
トントンと唇を叩くデーティア。
「そうですね。エリザが手引きしたのか、エリザが男だったのか、今のままではわかりませんね」
シルアが頷く。
「エリザを探すしか、今はやれることはありません。探索の魔法を教えましょう」
シルア驚いたことにデーティアは一度教えると、造作なく探索の魔法を使いこなした。まるで初めてではないかのように。
「デーティア、この魔法を知っていたのですか?」
シルアは尋ねた。
この魔法は魔導局が治安局と協力して、犯罪者や尋ね人を探す時に使うもので、おいそれと教えることもなく使うことも許可されない。
「使ったことはありません。解除したことはありますが…」
珍しく後半は小さな声になった。
「今はそれについては聞きません。捜査にかかりましょう」
二人は手を繋ぎ、探索を始めた。
まずは知っている者、エリザからだ。
二人の脳裏に次第に像が結ばれていく。
エリザの顔が浮かび、周囲も浮かんできた。
驚いたことにエリザは半死半生の有様で、薄暗い部屋の藁布団に転がされていた。顔は腫れあがり痣がいくつもある。服はスタボロであちこち血が滲んでいる。
怯んではいけない。
こんな有様をデーティアは初めて見たが、怯えより怒りが勝った。
エリザが居る場所を突きとめなくてはならない。
屋敷の外観が浮かぶ。大きな屋敷だ。
「ここはナルデナ公爵邸だわ」
シルアが息を呑んだ。
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