清拭



『パパへ』

 四歳の娘が、クレヨンで父に宛てた手紙を書いている。

 彼女はせっせとクレヨンを動かす娘の背中越しに、笑っている三人家族の絵をぼんやりと見ていた。

 娘は、自分をドレスを着たお姫様のように描いていたので、その両側に描かれた父母は家族というより付き人のようにも見える。三人の周りには、クラゲや魚のようなものが色とりどりに描かれている。ついこの間、家族で行った江ノ島水族館の絵だろう。

 絵を書き終えた娘は『たんじよびに すいぞくかんにつれててくれて ありがとう リンより』と辿々しい文字を綴った。書いているのがなんの手紙なのか、わかっていないのだろうと、不憫な気持ちになる。

 無理もない。

 娘は病院を怖がるので、救急車で運び込まれたと連絡があった際にも病院には連れて行かなかったのだ。だから、彼女は、父親がどうなったのかを知らない。


 会議の最中に倒れた夫は、運び込まれた病院で、医師らの必死の蘇生術の甲斐もなく帰らぬ人となった。

 享年四十五歳。

 飛ぶ鳥を落とす勢いの某ベンチャー企業の幹部候補として、精力的に日々を駆け回っていた。亡くなる前日も、大手取引口企業との接待飲みが長引き、珍しく深夜の帰宅をしていた。

 その時に、胸が痛苦しいような気がすると言っていたが、飲み過ぎだろうと胃腸薬を飲んで就寝。翌朝は、気分が悪い、二日酔いだろうと液体胃腸薬を飲んで出勤したのだ。

 夫の死因は、肺動脈血栓塞栓症。

 血の塊が肺の血管に詰まり呼吸困難となり突然死を引き起こした。こうして思い返せば、前夜から既に兆候は出ていた。それなのに、飲み過ぎだろうと、軽く考えていたのだ。

 今日の目で、昨日のことを見てはいけないのは理解している。わかってはいても『もし』の可能性を、どうしても捨てられない自分がいる。


 あの夜、夫が口にしていた『痛苦しい』に、もっと過剰に反応をしていれば・・

 翌朝、『気分が悪い』と言っていた夫に、液体胃腸薬なんかを出さずに、すぐ病院に行ってと勧めていれば・・

 妻である私がもっと、夫の体調に気付いてあげてれば・・

 そうすれば、『もしかしたら』夫の死を未然に防ぐことが、できたのかもしれない・・


 それまで鬼気迫る相貌で、夫に心臓マッサージや電気ショックを施していた医師や看護師たちの目から、希望が消えてしまったあの瞬間。

 ふっと力なく下ろされた青いグローブを着用した手、手、手。その間から見えた、紫色のチアノーゼで染まった夫の顔。

 あぁ、あの人は、もう無理なんだと悟ってしまった。

 彼女の脳裏には、その時に焼き付いた映像が、繰り返し再生され続けている。


「あらぁ、リンちゃん上手ねえー」

 母の声に我に返った彼女は、慌てて、娘と娘に寄り添う母の姿に視点を合わせた。

「うん!これね、すいぞくかんだよ!」

 そう元気に答えた娘は、明日、誕生日プレゼントで夫に買ってもらった水色のドレスを着ていくのだと言ってきかない。

 いったいどこに行く気でいるのか、どこかにお出かけするとでも思っているのか、怒る気力も失せた彼女に、いいじゃないの、と助言してくれたのは、訃報を聞いて駆けつけてくれた母だった。

「タカヒトさんに買ってもらった、あの子の一番の宝物なんでしょ? いいじゃないの」

「でも、葬儀の場なのよ。リンだけそんな」

「いいじゃないの。あの子にとったら、そんなの関係ないのよ。タカヒトさんも、きっと喜んでくれるわよ」


 夫が、喜ぶ?

 望まない突然死をした夫が、いったいなにを喜ぶと言うの?


 彼女には意味が分からなかった。

 だって、あの人は、心の準備もなしに、唐突に、一方的に、命を断ち切られたのよ。

 喜ぶとか見守るとか成仏とか、そういう問題じゃないんじゃないの?

 人間の人生は、産まれた時から選択の連続ってよく言うけど、倒れた瞬間の夫に、選択肢なんて用意されてなかった。

 運命を決める最後の選択肢は、きっとあの朝が、最後だった。それはわかる。でも、それを受け入れて、成仏しなさいなんて、虫が良過ぎない? 

 二つの線のどちらかを選んで進むあみだくじが、最終的に必ず結果に辿り着くように、夫の死は、自業自得の結果だったってことなの?

 彼女には、どうしても腑に落ちなかった。

 あんなに持てる自分の全てを発揮して生きていた人が、なぜこんな形で死ななければいけなかったのか。

 人生に辟易して自殺したい人なんていくらもいるのに。

 どうして、夫が?

「ママ!」

 スカートを引っ張られて、はっと振り向くと、娘が心配そうな顔で彼女を見上げていた。

 大きな黒目が潤んでいる。この子にとっては、初めて迎える肉親の死。もしかしたら、父親の死を理解できないかもしれない。だとしたら、その方が、この子にとってはいいのかもしれない。

 悲しみは、少ない方がいいから。

「ママが きえちゃいそう だった」

 明るく振る舞ってはいるが、娘も不安なのだ。

 しっかりしなければいけない。娘に、これ以上の不安を与えてはいけない。これからは、二人で生きていかないといけないのだから。

「ありがとう。ママは大丈夫よ。消えたりしないから」

 彼女は屈んで娘を抱きしめる。描き終えた画用紙を握った娘は、小さく頷いた。



 当日、彼女と娘、祖母の他に、夫側の親戚が数名、葬儀場で落ち合った。

「あらあらーリンちゃん!大きくなってえーキレイなドレス着てーいいわねえー」と、年配ばかりの親戚達に誉めそやされた娘は、得意顔で、ドレスの裾を両手で持つと、片足でクルっと一回転して見せたり、幼稚園で習ったダンスを踊ったりしていた。その様子を見守りながら、娘はきっと大丈夫だろうと安堵した。状況を理解できずに、なにがなんだかわからないままで済むだろう。そのほうがいい。

 今朝、娘は寝起きに「パパは?」と聞いてきた。

 それは、夫の生前には頻繁に聞いてきていた問いだった。

 夫が亡くなってからは、いつまで経っても帰ってこない父親のなにがしかの事情を、母や祖母から読み取ったらしく、彼女なりに気を使っていたのかもしれなかった。

 それでも、父親っ子の娘は、どうしても気になったのだろう。

 葬儀の意味がわからなくても、死んだという意味がわからなくても、どうやら特別な日であるらしい今日なら、父親に会えるのではないか。そんな無邪気な考えから、喪服を着ている母親に問い掛けたのだ。

「パパにあえる?」

 彼女は、娘の純粋な問いに、なんと答えていいのか言葉を捜し倦ねて固まった。

 確かに、会えは、するのだ。

「うん。会えるよ・・」

「よかった!パパにあったら、リン、おてがみわたすんだ!」

 娘はご機嫌で、ドレスを持ってくると、あっというまに着て、空いたチャックの背中を彼女に向けた。自動的にチャックを上げてやると、娘は昨日描いた画用紙を掴んで顔の前で翳す。

「パパ よろこんでくれるかなー」

 不妊治療をし続けて、ようやく授かった一人娘のリンを夫は溺愛し、仕事以外の時間は全て娘のため、家族のために費やした。夫の溢れんばかりの愛情をふんだんに受けて育ったリンは、もちろん夫のことが世界で一番好きだと言う。

『パパだいすきー!リンはおおきくなったら パパのおよめさんになるのー!』と満面の笑みで抱きついてくる娘は、夫にとって宝物以外のなにものでもなかっただろう。そのかけがえのない幼い娘を残していく彼の無念や計り知れない。

 娘が手紙に書いていた、江ノ島水族館のことが浮かぶ。

 誕生日には、お姫様になってイルカに乗りたいとの娘の希望を叶えるために、水族館に行ったのだ。

 とは言え、人ごみに弱い娘の事情と、夫の休みの事情を考慮して、更に誕生日が土曜日だったため、その一日前に有給を取って行く計画を立てた。だが、行くとなると、娘をお姫様に変身させなければいけない。夫婦は準備に大忙しだった。

 まず、娘が起きてきて顔を洗うと同時に目隠しをし、彼女が用意したドレスを着せて、髪を結うと、おもちゃのティアラを頭に乗せる。そのまま、娘の手を引いて準備の整ったリビングのソファーに座らせる。夫と目眴せをし、クラッカーと共に目隠しを外し、ハッピーバースデーを歌って、ケーキやご馳走を食べた。

 娘は大喜びで、何度も姿見の前に行って自分の姿を、角度を変えて眺めていた。それから、幼稚園で習ったダンスを上手に踊って、彼女は夫と二人で写真を撮ったりビデオカメラを回す。ひとしきり済むと、今度は車に乗ってお出かけだ。

 行き先は、江ノ島水族館。けれど、もちろんイルカに乗るなんてできるはずはなく、夫は、わざと娘の前で「イルカに乗りたいんですけど」と、受付の人に話して断られる手段を取った。

「リン、ごめんな。イルカさんは、人に乗られるのが嫌いなんだって。握手ならできるみたいなんだけど・・」

 割と物わかりがいいリンは、特にぐずることもなく、握手でいいと答える。

 実はこれも、パパ大好きが成せる技だ。大好きなパパがすまなさそうな顔をして謝っているのだ。困らせることはしたくないという心理も、十二分に働いていただろうと思う。相手が彼女だったら、こんなにすんなりとはいかない。駄々を捏ねはしないまでも、不貞腐れるくらいはしただろう。

「ありがとな、リン。じゃあ、パパと一緒に、イルカさんと、握手しようか」

 笑顔の父にそう言われた娘は、上機嫌に頷く。

 ところが、またしても問題が勃発した。イルカとの触れ合いは四歳からなのだ。これにはさすがの夫も、事前の下調べが抜けていたらしく焦っていた。あと十二時間後には四歳になるんです!今日しか誕生日を祝えないんです!一生に一度の特別な日なんです!この子は賢いので注意も聞けます!危なくないように私がちゃんとフォローしますから!と、必死に職員を説得した。その様子を、娘は敬愛と愛慕と感動の入り交じった黒目がちの潤んだ眼差しで、じっと見つめている。そして、粘った結果、職員が夫に根負けし、娘は晴れてイルカと戯れることができることになった。大好きな夫に抱えられて、誇らしく満たされた顔で列に並ぶ娘の姿は、今でも忘れない。父と娘がイルカと触れ合っている写真は、大きく伸ばされて居間に飾られている。幾つか撮った中でも、娘がイルカの鰭に触りながら、隣にある父の笑顔に笑いかけている写真を選んだ。無邪気な娘の笑みからは『パパ、だーいすき!』と聞こえてきそうだった。

 彼女は、噛んだ唇を更に強く噛み締めるのが精一杯で、目の前でキャッキャとはしゃぐ娘を漠然と見つめるしかできなかった。

 無意識に夫に祈っている自分がいる。


 どうか、あなたの宝物のリンを、悲しませないであげて・・!

 お願いよ・・!


 しばらくすると、一同は納棺式を行う部屋へと案内された。

 靴を脱いで上がった小ぢんまりとした部屋には、棺を前に、愛用していたスーツを着用した夫が寝ていた。

 既に化粧を施されている。化粧をしているのがわかったのは、明らかに顔色が違ったからだ。

 最後に見た夫は、チアノーゼが広がった白紫色をしていた。

 火葬場の関係で葬儀が伸びてしまったため、その後、更に変化してしまったのだろう。ワイシャツの襟元から見える肌は真っ黒だ。顔も浮腫んで、生前の面影がほとんどない。

 彼女は、途中で立ち止まってしまった。

 夫の前に行くべきなのに、足が動かない。

 夫の変わり果てた姿を眼球に映すのが精一杯で、その場に膝をついた。

 孫の手を引いて入ってきた母が、彼女に寄り添う。

 それまでご機嫌でついてきてた娘は、部屋に入るなり、彼女の後ろに隠れて、腕にしがみついてしまった。

 あまりに違いすぎるのだ。

「リンちゃん、パパよ」と祖母に促されるも、娘は、彼女の背中でイヤイヤと首を振り続けている。

 怖いのだ。

「最後に、よろしければ、皆様でご清拭をしてさしあげてください」

 納棺師が濡らしたペーパータオルを差し出すが、喪主である彼女はそれをぼんやりと見つめるだけで動けない。

 見兼ねた母が、彼女を介助しながら夫の近くに座らせた。くっ付いてきたリンが、彼女の背中から父親を一瞥して引っ込んだ。

 彼女は、納棺師が差し出したタオルを受け取ると、夫の手に触れた。

 大きくてゴツゴツした夫の見慣れた手は、色を失い、冷たく、重い。

 我慢していた涙が、関を切って溢れ出した。

 夫の手は拭いても拭いても濡れてしまい、とうとう彼女は顔を覆った。

 その横で、目を赤くした母が、義理の息子の手を濡らす彼女の涙を拭いている。

「パパの手、拭いてあげよ」と、祖母が孫に促したが、リンは泣きながら首を横に振るだけ。

 娘は、目の前に横たわる父親と呼ばれている人の形をした誰かが、怖くて怖くて仕方ないのだ。

 浮腫んで厚塗りされた誰かを、カッコよかった大好きな父親だと認識したくなくて、否定したくて、首を降り続けている。


 パパじゃない・・パパじゃないよ!


 でも、父親のスーツを着ていて、父親と同じ手の形で、父親と同じ少し茶色の髪の毛で、母親とお揃いの指輪をつけている。それ以上、見ていたくなくて、母親の後ろに隠れた。

 他の親族も泣いているばかりで、誰一人、前には出てこようとしない。

 納棺師が、まだお時間がありますので、お別れのお時間にお使いくださいと言って出て行った。

「触れられるのは、これで最後になるんだよ」

 母の言葉で、彼女は再び夫の近くに躙り寄る。最後に夫になにを言っていいのか、なにも言葉が出てこない。ただ、固くなった夫の体に手を置いて、泣くことしかできなかった。

 背中に張り付いていた娘が「パパぁー・・」と微かな叫びを上げた。


「パパぁー・・パパぁー・・」


 彼女は、嗚咽する娘を抱きしめた。

 まだこんなに幼いのに、辛い現実を突きつけてしまったのだ。

 娘の声につられて、なんだってこんなことになあー、まだ若いのにぃー、と呻き声とも泣き声ともつかない静かな悲しみが部屋を満たしていった。



 娘は、がんばった。

 自分で描いた手紙は、自ら、夫の胸元にそっと置き、お別れ花を入れる時には、積極的に父親の顔周りを飾った。

 娘は、翌日の告別式でも、父親から贈られた宝物のドレスを脱ぐことはなく、魂の抜けたような彼女に必死に寄り添い、立派に父親を見送ったのだ。焼き上がった骨を母親と一緒に拾って、骨壺に納め終わると、さすがに疲れたらしく帰路を辿る車の中で眠ってしまった。

 小さくふっくらとした手で、父が入った大きな骨壺をしっかり抱えて寝入っている姿は健気そのもので、見る者の涙を誘った。

「この子を、もう二度と、悲しませられないね」

 帰宅し、起きない娘を抱えて運び込むのを手伝いながら、母が言った。

「この子には、あたし達二人しかいないんだから」

 ズキンと胸にこたえた。

 そうなのだ。

 彼女の父、娘にとっての祖父は、孫の顔を見ることなく膵臓癌で他界している。

 夫の両親もまた、娘が産まれて間もなく交通事故で帰らぬ人となっていた。何の因果なのか、とうとう愛する夫までも奪われてしまった。この上、母親の自分か祖母のどちらか、もしくは両方に、万が一にもなにかあったなら・・娘は、天涯孤独の身となってしまう。

「お互い、くれぐれも体には気をつけないとね。この子のためにも、元気でいなくちゃ」

 娘の額に張り付いた髪の毛をそっと払いながら、母は慈愛に満ちた微笑みを孫に向けた。

「・・働かなきゃいけないわね」と彼女が呟く。彼女は、専業主婦だった。

「だって、この家のローンは、家主のタカヒトさんが亡くなったら払わなくてよくなるんでしょ? 遺族年金も入ってくるだろうし、一人親の手当てもあるらしいから、あなた達二人、ここでこのまま生活していくことはできると思うよ。とにかく、しばらく休みなさいな。元気になってから、色々考えればいいじゃないの。あなたもリンも休息が必要よ」わたしも手伝うから、と母の温かい手で背中を擦られた途端、再び涙溢れてきた。


 我が家という舟を操縦していた夫は、もういない。

 私たち二人は、荒れ狂う恐ろしい社会の大海原に取り残されてしまったのだ。

 舵を取る者のいなくなった舟は、木の葉のように彷徨って遭難し、挙げ句に沈没してしまうかもしれない。


 そうなったら娘はどうなるの?

 母親である自分が舵を取らないといけないのだ。できるのだろうか?


「大丈夫大丈夫。なんとかなるよ。疲れているだけだから、ちょっと横になってなさいよ」

 彼女は言われるままに、娘の隣に横たわった。

 夫に会いたかった。彼の口から気持ちを聞きたかった。


 あなたは、なにを思いながら死んでいったの?


 今はなにを思っているの?


 どこにいるの?


 わたし達は、これからどうすればいいの?


 夢でいいから、出てきて欲しいと願った。

 眠りはすぐに訪れた。ずっと、眠れていなかったのだ。

 だが、夢はみなかった。


 テレビの音がして目を覚ました。

 食欲をそそる匂いが充満したリビングで、娘がテレビを見ていた。彼女に気付いて駆け寄ってくる。

「ママ、大丈夫?」

 娘の背後、テレビの前のチェストの上には夫の骨壺。一緒にテレビを見ているつもりなのだろう。


「リン、がんばるよ だから、ママなかないで」


 彼女は、ごめんねごめんねと号泣しながら、娘を抱きしめた。

 娘は、大好きだった父親を亡くしたことで、我家という舟の、乗組員の一員にならざる負えなかったのだ。

 もちろん、成長するにしたがっていつかは一員になるのだが、そんなことなど気にせず伸び伸びと育って欲しかった。だが、それは叶わない。操縦者の夫は、渦巻く荒波に飲み込まれて、二度と戻ってはこないのだ。

 幼い娘は、娘なりに必死に舟を守ろうとしている。

 舟の沈没は、家庭の破滅を意味することを無意識のうちに感じとっているのだろう。

 泣いている場合ではない。


 大切なこの子を守っていかなければ・・!


 この子が笑顔でい続けられるように、自分も強くならなければ!


 娘と一緒にがんばって、この荒波を乗り越えていかなければいけないのだ。

 彼女の決心は固まった。

「ありがとう。リンのお陰で、ママ、もりもり元気出てきたよ」

「ほんと? じゃあ ごはんたべよう!」

 二人を見守っていた母は、エプロンでそっと目元を拭くと、食卓の上にお手製の夕飯を並べ始めた。

 鼻をかんだ彼女は、娘と手を繋いで、食卓に向かう。


 そう・・生きていくしかないのよ。

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