第13話

 母が亡くなって、一年が経った。あの後、はるさんは花を散らして、そして枯れてしまった。今となっては、枝だけが残っている。

そんな姿を見ながら生活するのは、何とも耐え難いものだった。それでも、母が私に、生きる目標を与えてくれたから、どうにかして、乗り越えることが出来た。母が見たいと言っていた、大変優しくて、私を愛してくれる旦那様に巡り会えた。母とは違っている愛情だけれど、それでも、なんとかして心の穴を塞ぐことが出来た。今では、お腹の中に赤子を授かっていて、もうひと月もすれば生まれると、お医者様は言っていた。

 お庭の石段に座って、空を眺めていると、砧青磁きぬたせいじ色の空が、一面に広がっていた。足元には、若草わかくさ色の芝生が広がっており、1本だけ、少し種類が違っているものが生えていた。大変小さくて、よく見ることが出来なかったが、しかし、あれはきっと、はるさんの子供なのだろうか。となると、私のお腹の中にいる赤子は、


――お母様の、生まれ変わりなのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

番いの母 つきなの @sharr_k

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ