第9話

 少し肌寒くて、目が覚めた。薄く目を開けると、辺りはとうに暗くなっていて、月明かりが部屋を薄暗く照らしていた。あの後、私は母のお膝の上で眠っていたらしかった。母は白くて細長いその手で、私の頭を何度も何度も愛撫あいぶしていた。「起きたのね、翠。」と、母はそっと微笑んだ。母と、その後ろにあるはるさんが月明かりに照らされて、とても儚く、まるで、夢の中にいるようであった。


「ごめんなさい、お母様。お夕飯まだだったかしら。今作るから、少し待っててね。」


そう言って立ちあがろうとすると、母はそれを引き止めた。


「いいのよ、翠。今日は、あまりお腹が空いてないみたいだから。今日は、一緒に寝ましょう。ほら、最近は、同じ時間に寝れていなかったでしょう。一人で寝るのは、寂しいわ。」


私はその言葉に心が惹かれ、一緒に寝ることにした。いつもは少し離れてるけれど、今日は隙間を無くして、同じお布団で寝た。それが何だか嬉しくて、すぐに夢を見ることができた。

 

 母と父が楽しそうにお話ししている夢だった。二人ははるさんの下で仲良く座って食事をしていて、こちらに気がつくと、手を振った。母の笑う姿を、久方ぶりに見れた気がした。

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