第5話

 二月七日 雨 水曜日

 今朝目が覚めると、鞠が異常に汗をかいていたので、おでこに手を当てると、とても熱かったのです。それだのに、昨日から大雨が降っているせいで、お医者様に行けないのです。仕方がないので、わたしたちで看病をすることにしたのですが、しかし、夜になっても一向に熱の下がる気配がしないのです。どうにか、明日には止んでいることを願います。


 2月8日 曇 木曜日

 今朝は、まだ雨が降っていました。昨日よりは止んではいますが、まだ危険な状態でした。風が強いおかげで、はるうでも折れてしまいました。とても心配になり、食事も喉を通らなかったのですが、しかし、幸いなことに、黄昏たそがれが迫ってきた頃になると、雨が止んだのです。急いで下町まで降りてお医者様に見てもらいました。お医者様が言うには、あと一日遅かったら、命に関わっていたそうなのです。高龗様たかおかみ》様が味方してくれたのでしょうか。

 そして、お薬を貰って家に帰って、はるの様子を見に行くと、やはりうでは折れていましたが、まだ芽があったのです。鞠もはるも無事なようで、本当に安心しました。まるで、夢を見ていたようでした。


 今ではとても凛々しい母なのだが、幼い頃はこんな一面もあったのだと、可愛らしく思えた。これなら良い話ができると思い、本を持って立ち上がった途端、家の玄関から「ごめんくださーい。」という声が聞こえた。戸口を開けると、お医者様が立っていらっしゃった。

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