第4話

 四月十二日 晴 水曜日

 一ノ瀬家に、初子ういごが生まれました。女子おなごだったので、お上品な子になって欲しいと思い、「鞠」と名付けました。頬が梅の花のように赤く、とても可愛らしいのです。

 そして、お庭にも、一本の桜の木が生えてました。何の桜なのかは分からないのですが、しかし、運命なのだと思って、我が子のように、大切に育てていきたいと思っています。桜の名前は「ハル」にしました。「美」と書いて「ハル」。春に、見事な花を咲かせるのです。散りゆく時も、風に靡かれる時も、いかなる時も美しくいるのです。これから、共に暮らすのです。


 六月二十四日 曇 月曜日

 鞠とはるが生まれてからふた月が経ちましたが、今日、漸く声を発するようになりました。私が「お機嫌はどうですか。」と言ったら「あー、うー、」と返してくれたのです。背丈も、生まれた時より大きくなってきました。はるも、とても順調に育っています。今は私の足首ほどの大きさです。これからも、元気に育ってほしいものです。


 微笑ましく思いながらページを捲っていくと、次は、少し震えた字で書かれたページがあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る