IF① ムラサキカガミ 攻略失敗ルート

 高野は『ムラサキカガミ』から何とか距離を取ろうと、力を振り絞り走ってきたが、ついに体力が尽きてしまった。


「っ、ぜぇ、っは、くそっ――っあ゛ぁっ!」

 とうとう足がもつれ、高野は地面に滑るように倒れこむ。

 荒い息のまま、何とか前に進もうと這いつくばるが、高野の行く先を『ムラサキカガミ』が塞ぐ。


 怪しげな紫色の光を纏いながら、『ムラサキカガミ』は高野の眼前に近付いてくる。

「ぅ、っやめ、い、ややっ、――っひぃっ!」

 高野が右手を伸ばし、『ムラサキカガミ』を掴もうとするが、その腕は真っ暗な鏡面に吸い込まれた。鏡に飲み込まれた腕は指先までの感覚が全く無く、まるですっぱりと切り取られたようだった。


 その異様な感覚に全身の鳥肌が立った高野は、鏡から腕を引き抜こうと、残った三本の手足を駆使する。だが、奮闘むなしく、右足、左足と次々に鏡に吸い込まれた。

「あ゛、っ!こんのっ、はな、せ!っ、ぁ、あぁ…っ!!――っだれか、誰かああぁぁ!」

 残った左腕で地面をガリガリと引っ掻くが、『ムラサキカガミ』は容赦なく、ゆっくりと高野の胴体を飲み込んでいく。


 段々と感覚を失っていく身体に恐怖を覚えながら、高野は叫び続ける。だが、目の前に広がる暗闇は変わらず、高野の希望を断つかのように、静まり返っていた。

「っし、にたく、な――」

 首、口元まで鏡に飲み込まれた高野は、最早叫ぶこともできず、涙を流しながら残された左腕を伸ばした。


 何か、小さい生き物が走ってくるのが見えた気がしたが、頭まで飲み込まれた高野には、最早それが何なのか思考することすらできなかった。


 そして、○○○○○ ○○○という存在は、この世から消えてなくなったのだった。




 ――『ムラサキカガミ』攻略失敗――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る