第26話 国王陛下(3)

 そのまま半ば抱えられるようにして立っていると、




「お祖父様、申し訳ございません」



 断固とした意思を感じる、はっきりと通った声が彼の胸から響いた。



「アイリーンは熱が下がったばかりで体調が悪く、ウィリアムもはしゃぎ疲れてしまったようです。お訪ねくださったところ恐縮ですが、このまま部屋を下がる非礼をお許しください」



「……許そう」



 そのままエドワードに横抱きに抱えてられて部屋を出る時、王のかすかな呟きが耳についた。




「ーーたかが紛い物の二世が……」





 その呟きは、一体どういう意味だったのだろうーー。




   ⌘ ⌘ ⌘




 部屋に運ばれる間に、しだいに意識がはっきりしてきたけれど、手足はまだ冷たくかすかに震えていた。


 それでも、わたしを横抱きにしているエドワードの体温と鼓動が胸から直接響いて、しだいに状態は落ち着いていった。





「……う」





 意識がはっきりしてくると、ウィリアムが心配そうにわたしを見上げているのが分かった。





「アイリーン? 大丈夫?」


「……ごめん…なさい」


「なぜ君が謝る? 僕こそなにも…」


「ぼくなんかビックリして動けなかった!」




 小さなウィリアムがすっかり勢いを取り戻していて、思わずわたしまでほっとした。




「ふふっ。ウィリアム、それが普通だわ。あそこで堂々としていられるエドワードが特別よね。見習いたいわ」



 と、ぎゅっとエドワードの腕に力が入ったので、わたしは思わず彼の顔を見上げた。




「…………」


「どうしたの?」


「……ううん。何でもない」





 少し様子がおかしかったのは、あの威圧的な祖父王のせいだろうと、わたしは勝手に納得した。


 そこからは、めまいも治ったのでわたしも自力で歩こうとしたけれど、エドワードは部屋まで自分が抱えていくからと、断固として腕から下ろしてくれなかった。




   ⌘ ⌘ ⌘

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