第22話 この命のある限り(3)
公爵家の娘であるわたしが王子たちの遊び相手となるのは納得できることだった。父は王太子の側近で、わたしは王子の婚約者でもある。
そもそも、そうやって王家に近しい存在として扱われるのは、血縁関係と政治が影響していた。
いまの王ーーエドワードたちの祖父と、わたしの亡きお祖母様・エリザベスが兄妹なのだ。
王はたったひとりの兄妹だったお祖母様を非常に可愛がっていて、彼女が公爵家に嫁ぐ時に、なんと自分たちの子ども同士を娶せる約束を交わしたのだと言う。
(それだけ聞かされると、行き過ぎとも思える愛情だけれど……)
お祖母様も体が弱く、生きていくのに手厚い愛を必要とした。それゆえに親密に家族が結びつくのは、わたしもよく分かった。
ただ、お祖母様はわたしの父を産むとすぐに亡くなってしまう。さらに、王の元に生まれた子どもたちは皆、男ばかり。
残念ながら果たされなかった王の念願を叶えるべく、生まれると同時に婚約したのが孫のエドワードとわたし……という風に聞いている。
つまり、わたしにも王家の血が4分の1流れている。
顔つきがお祖母様にそっくりだと言われることもあった。
髪は金髪ではなく淡い白銀色だけれど、瞳はほんの少しだけ王家の紫が混じった色。
お祖母様には、似なくて良い体の弱さまで似ているのだから。
もっともーーそんな婚約にまつわる「王の念願」など建前でしかない。
我が家を含む3つの公爵家は、もともと建国から王家に仕えてきた古い家門で、それぞれ軍事や政治において主要な一族だった。
ほかの二つが「軍事の公爵家」「法制度の公爵家」と呼ばれるのに対して、我が家は「外交の公爵家」と言われている。
先の戦争を制してから数十年の平和が続いていることもあり、交易の要となる港と経由地を有している我が領地は、内外から注視される存在だった。
これは政なのだ。
王家にとって貴族たちのバランスをとるための一手。そのために今は財を左右する公爵家の一人娘を婚約者に据える。
妃となれば、公爵家に対するある意味での人質となるし、公爵を重用していると知らしめるカードにもなる。
そのしたたかな狙いこそが、婚約の大きな目的であるのは間違いないはず。
(いずれにしても……わたしがエドワードと過ごせたのはこのおかげではあるのだわ)
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