第19話 記憶~エドワード~(3)




 ふたつ目は冬至祭の話だった。




 本当に目の前で見たのでなければ語れないような細部までエドワードは知っていて、ありありと情景が浮かぶように教えてくれた。


 けれど、ふと疑問に思ったのは、どうやってかれがそれを見たのか?ということだった。


 貴族の社交界デビューしていない子どもは、冬の間は自分の領地で過ごすのが一般的だ。雪に閉ざされるような季節、わざわざ王太子とともに地方に赴くとは考えにくい。なら、歓待した側の領地の子ども?




 するともう一つ不思議なことが浮き上がる。




「王太子がワインを飲めなかった」なんてゴシップ。普通は隠そうとするものだ。


 とくに、王太子を歓待して、ワインを差し出すはずだったのにそうできなかった領主側としては……。

 ならば、彼は王太子のごく身近にいて、領主側ではない子どもーー王家の子どもなのでは?




 みっつ目に、書物という高価な品を数多く手に入れて、読まされている少年だったからというのもある。公女であるわたしも本は読んでいるけれど、病弱で他の趣味に乏しいからだ。




 幅広い分野の書物を目にするような環境で、さらに剣の訓練も重ねている彼は、相当な教育を受ける存在ということーー。


 そんな同年代の少年は、この国ではエドワード王子くらいしか当てはまらなかった。

 まだウィリアムは幼いし、ほかの王族は成人している者ばかり。





 でももしフードを被らず顔を見せてくれていたら、それだけですぐ見抜けたと思う。


 エドワードとは会ったことがなかったけれど、彼の祖父である王や、父である皇太子の肖像画はみたことがあったから。


 顔つきがとても似ていることに気付いただろう。





「そうか!」





 わたしの思考を熱心に聞いていたエドワードは満足したようだった。




「はぁ……すごいな。君となら何でもできそうだ」



「えっ?」

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