第13話 安堵と希望(3)
わたしが生きていられるのは、公爵家に生まれ、そうやって周囲のたくさんの手が支えてくれるからだった。
ありがたくて、優しさを噛みしめることばかり。
けれど、与えられ助けられるばかりで、この身には返しきれない恩の大きさを思うと胸がいっぱいになるときがあった。
(せめて、何かできることはないかしら?)
公女としての働きどころか、野を駆けることも、歌うことも、誰かを助けることもできないのに?
(わたしは一体、何ならできるんだろう)
自問自答するたび、それ以上は考えてはいけないと自分を引き留めた。
考えても答えのない心細さや焦りは、心の中にひたひたと溜まっていく冷たい水のようだった。
ひとりぼっちで立ち尽くすわたしの足元に、その冷たい水が押し寄せる。
年齢を重ねるとともに、それは静かに着実に水位を増していった。
幸運によって死の波を乗り越えるたびに、なんとも言えない気持ちになっていたあの頃。
ーーそこまで当時の気持ちを反芻したところで、なんだかずいぶん暗い思考だと気づいた。
とっくに乗り越えたと思っていたのに。
これは良くないわ。
11歳のこの体に引っ張られてる。
発熱に慣れていても、身体の調子が悪いときは、思考もつられて良くない方へと傾きやすい。
眠りましょう、今は。
寝返りをうつと身体がベットに沈み込む。
休息を必要としている身体は、すぐにうとうとし始めてーーそうして見た夢は、過去のある日の記憶だった。
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14話からは毎週土曜日の朝10時に投稿します。
もしよろしければご覧ください。
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