2-108. ダンジョンキーパー、レイフィアス・ケラー「ケルッピさん、お前もか、的な!?」
災厄の美妃。
この名は幾つかの伝承に現れている。
一つは原初の呪われた剣の名だ。
混沌のまつろわぬ神の一柱、“辺土の老人”がこの世界にもたらした忌まわしい武器の一つで、歪に捻くれ湾曲した醜い刃を持ち、闇のように黒くあらゆる光を吸収するというそれは、傷を負わせると腐らせ、また相手の魔力をも吸い取り力へと変えると言う、別名“エルフ殺し”。
またかつて第一期クトリア王朝の“豪奢王”アウグスティオ王を狂わせその多くの財を使わせた傾国の美女も通称“災厄の美妃”と呼ばれる者の1人。
実際の女性に対して使われるときは、前世で使われていた言葉、物語的なモチーフで言うところの“
僕はこの「物語的モチーフとしての男を破滅させる “
これ、ぶっちゃけ俗な言い方をさせてもらえば、「俺が痴漢してしまったのは、女が誘惑したからだ!」に近い「男の言い訳」感を物凄い感じるんだよねェ。
「男を惑わせる魔性の女」と、女性の方を主体にして語るけど、いやいや、単に男が馬鹿でだらしなくて欲深だから「勝手に女に入れあげて、勝手に破滅してるだけ」なこと多くね? と。
勿論ある種の駆け引き、手練手管に長けた女性ってのは居る。けどそんなのは性別限らずそこらに居るわけで、それこそ女を騙して金を巻き上げるあくどい男だって腐るほどいる。けどそういう男に対しての見方と、所謂“
話が逸れたけど、この世界での“災厄の美妃”には、確かにそういう“
シンプルな話としては、ただべらぼうに強い女性へのある種の畏敬の念の現れとして使われることもある。
ジャンヌの母が“災厄の美妃の娘”と呼ばれていたのが、彼女の言うとおり「とにかくべらぼうに強かったから」と言うだけなら別に「へー、そーなんだー」程度の話で、ジャンヌの資質の強さもその母親譲りなんなだなー、で済む。
ただここクトリアで、そうじゃ無い意味でのそれだとしたら───。
───と、ここまで考えてページをめくる手を止める。
この件、やっぱあんまりほじくり返さない方が良いのかねー。
うん、まあ……人に歴史有り、だよな。
◇ ◆ ◇
「うわ、何だこりゃすげー気持ち悪ィな……」
これまた真底嫌っそーーーに顔を歪めて吐き捨てるジャンヌ。
「え? え? 何? それだけなん?」
「あ~~~……何つーか、こう、みぞおち辺りがぐぅあ~~~、で、うえぇぇ~~~って、なる感じ?」
「全ッ然、分からへん! 何なんそれー?」
「だからさー。何かこう、……ぐぅわっ……って、嫌な感じになるんだよ」
僅かながら、僅かずつ。魔力循環を覚えて、僕がでっち上げた魔法剣……というか付呪のされた木刀“オソロシ丸”へと魔力を籠めていったアデリアだが、その魔力が“一応魔法効果を発揮できる程度”にまでたまったことで、効果のほどを確かめようとジャンヌへと“テスト”してみたところの感想だ。
「ジャンヌが、その程度にしか感じないのは、精神的、肉体的な強さと、魔力への強い耐性の、お陰です。
これが、それほど大きく……強くない、動物、魔物なら、恐ろしさで、逃げ出す、こともあります」
付呪されているのはそれ程強くない【恐怖】効果なので、まあその程度だ。
「せやたら、岩蟹とかも!? 追い返せるんかな?」
「多分無理です。もっと小さくて弱い相手。それにアデリアは剣術がクソ雑魚ナメクジ弱いので、まともに戦っても当たらない。あくまで、御守り」
そう言うとまたアデリアが百面相しながら
「厳しィ~! レイちゃん可愛い顔してめっちゃ毒舌ゥ~! アタシは誉めて伸びる子なんやから、もっとええとこ誉めてェよ~!」
と、やいやい騒ぐ。
んー? とにかくまともに戦えると思うなよとの釘さしの意味で、知ってる限り最も強調された帝国語で弱さを表現してるけど、毒舌なのかな? 誰から聞いたんだっけな、あの言い回し……“獄炎”キャメロンか? ……うん、毒舌だろうな。
「ま、そいつの言うとおりだ。おめーはクソ雑魚ナメクジ弱いんだから、間違っても進んで戦おうとか考えんなよ」
「うひぃ! また言う~!」
……ちょっとアデリアのリアクションが楽しくなってきた。いや、いかんいかん。
何にせよ誉めると伸びるより早く調子に乗ってやらかしそうなアデリアは置いといて、ジャンヌの方。
こちらはやはり伸び率高い。
遺伝的、環境的に受け継いだと思われる母親からの元々の資質や教えが、魔力瘤の悪化で抑えつけられ衰えていたのだと思われるが、ここに来て基礎からみっちり丁寧にやり直すことで再構築されている。
魔術師になるには理論の方をきちんと学ばなければならないのでまた別だが、例えばアデリアに渡したような【魔力通し】で強化できるタイプの武具なら十分扱えるだろう。
ただ僕の付呪の技術では、今あるドワーフ合金武具に付呪するのは無理。というかドワーフ合金武具の付呪や加工は基本的には古代ドワーフの秘術になるのでかなり特殊なのだ。多分僕の母ナナイでもドワーフ合金は扱えない。
アデリアの言う“師匠”という人はその特殊なドワーフ合金加工や付呪の技術を持っているらしいので、かなりの凄腕なんだろう。
うーむ、偏屈なドワーフ鍛冶師? なかなか定番な感じではあるね。
◇ ◆ ◇
下位団体のケルッピ組……あれ、最初はケルッピCo.とか言って子会社的イメージだったのに、何か既に指定暴力団想定の例えを普通に使う様になってるな……まあ良いか。実状として暴力団みたいなもんだし……の方は着実に成果を上げているけど、今ちょっとばかし手間取る場所に差し掛かっている。
占拠していった谷底周りの一つが、表向き小さな裂け目程度のものに見えたのが、実は奥で結構な規模の古代ドワーフ遺跡に繋がっていて、しかも僕としては初対面となる“古代ドワーフの守護ゴーレム”が居るみたいなのだ。
で、これがまたケルッピ組とは相性が悪い。
古代ドワーフの守護ゴーレムは基本的には当然ながらドワーフ合金製。ドワーフ合金は鉄より重くて硬く、金に似て錆びたり劣化したりせず、そして魔法への耐性もある。
ケルッピさんの【水の奔流】は大量の水を相手に叩きつけ押し流す魔法だが、当然重い相手には効果が薄い。
またもう一つの得意分野である幻惑系魔法も生物でないと通じない。
ケルッピ組構成員はというと、双頭オオサンショウウオは金属製の硬い敵には決定打が無く、弾力はあるが装甲のない身体は大型の守護ゴーレムの剣やハンマーには耐えられない。
岩蟹も同様、特に大きな守護ゴーレムの金属ボディを破壊できるだけの力はなく、殻が魔力もあり硬くはある為剣には強いが巨大ハンマーの守護ゴーレムなんかには粉砕される。
現地採用組はどうかと言うと、そう大差はない。特に金色オオヤモリなんかは双頭オオサンショウウオのやや小柄で素早いバージョン呪い付き、みたいなもんなのでより無力。
唯一ガチタイマン出来るのは灰色岩鱗熊くらいだけど……厄介なのは大型でパワーのある守護ゴーレムとやりあっていると、小型の蜘蛛みたいなのがちょろちょろやって来て、電撃をビリッとかましてくる。それで灰色岩鱗熊は注意を逸らされ力も抜けて不利な状況に追い込まれる。
そんな感じで数回程対戦しての戦績としては勝率が二割にも満たない。
灰色岩鱗熊が出張ってみても、三回に一回勝てるかどうか。
それも、大蜘蛛部隊を合流させて糸で相手の動きを阻害した上で高所から突き落として破壊、みたいな搦め手で、ガチタイマンでは完全敗北ばかり。こちらのエースである灰色岩鱗熊をなんとか帰還させ治療するので手一杯だ。
灰色岩鱗熊は冬眠し損ねた穴持たずの気性の荒さなのか、種族として、または個体としての性質故なのか、それで怯んで意気消沈するということも無く、むしろやる気は満々でリベンジに燃えてるようだ。目を離すと勝手に遺跡の奥へと乗り込んで、暴れてはやられる、という状況を繰り返している。敵にはしたくない執念深さだけど、こちらの制御がどんどん効かなくなっているのが困りもの。
なので灰色岩鱗熊に対して大蜘蛛を三体程を“従者指定”にして常にアシスト出来るようしておいた。
戦闘になれば相手を糸で縛り、灰色岩鱗熊が手酷いダメージを受けたらそちらを糸でがんじがらめにして引っ張って運んで来る。
そしてケルッピさんが【鎮静の水】と【癒やしの水】で落ち着かせながら回復をさせ、食い物を与えて休ませると───一眠りしたあとにまた気がつくと遺跡へ突撃しているのだ。
この遺跡、思うに多分「アタリ」なんだよな。
えー、つまり「この巨大な谷間から外へ通じる道」という意味での「アタリ」。
古代ドワーフ遺跡ということはかつて誰かが作ったもので、自然発生した洞窟や裂け目と違い出入り口がある。
で、この標高の高い位置にある山岳の谷間から穴を掘り建築した───という可能性よりは、外から山岳に穴を掘り建築して、それがこの谷間まで通じた、と考える方が自然。
なのでケルッピ組にここを重点的に攻略してもらうのはむしろ全然OKなんだけど───まー、今の戦力ではなかなかどうして難しい。
あの卵が孵ってくれると何かしら手は広がるんだろうけど……むーーん。
う~む、どーしたものか……。
エアチェアーにもたれ掛かるかにしながら、顔を上げて思案する。
自動的にバランスを取るよう作られているらしいエアチェアーに軽く勢いをつけ、ロッキングチェアよろしくゆらゆらと揺れていると、いきなり覗き込む大きな目。
「おわ!」
ゴチン、とデコとデコをぶつけてお互いに悲鳴。
「むひ! 痛ったいいぃ~~!」
おでこを抑えつつも何か嬉しそうなアデリアに、
「すみません、大丈夫ですか?」
「でへへー、いや、ええねんええねん。へへー」
うーん? 何をにやけてるのかいな?
「それよりな、へへへ」
……何か不穏な予感。
「レイちゃんにもろた、“オソロシ丸”な。あれ、けっこうな……でへへー」
「……何ですか?」
「けっこう、イケんねんて!
あんな、ジャンヌはあかんかったけど、他の魔獣やったらどーなるんかなー思うて、試してみてん」
「え?」
どこで!?
「あ、外は出てへんよ?
最初はな、毒蛇犬な。なんぼかおったやろ?」
外へ出る計画を立てたときに岩鱗熊等と一緒に「土の迷宮」から召喚していた数体の中から、突風に飛ばされずに残った奴か。
上のフロアでは特にやることはないのだけど、一応警備巡回をさせている……閑職だ。
「訓練室におったから、試しにやってみたらな……効果あってん!
ぴゃーーーー! 言うて、逃げ出したんよ!? スゴない!?」
あー、うん。ちょっと凄い。かも。
「そんでな、大蜘蛛な。あの、レイちゃんの使い魔いう子とはちゃう子らやけど、半分くらいは効いた感じ? 効かん子もおったけどな」
へえ。大蜘蛛部隊はけっこうマメに働かせてるので、このダンジョン内では魔力の補正が結構かかっている。なのでその分耐性も高いはずが、それでもそこそこ効くのか。
「ほんで次は、二つ頭のぬろぬろな」
「え? まさか下に行った? ですか?」
下、つまりケルッピ組拠点は一応前線なので、勝手に降りないようにと注意しておいたのに!
「ちゃ、ちゃうねん! 降りよ思って降りたんちゃうねん!
荷物運びの大蜘蛛追いかけてったら、道迷うて気がついたら降りてもーてたんよ! 不幸な事故なんて!」
う~~~~……白々しい!
完全な疑惑の眼差しでアデリアを睨むと、目を逸らしてすっとぼける。
「……まぁ、まあちょっとはな……、このまま行くと行ったらあかん言われてるとこ降りるんやろなーーー……て、思うてたけどな……」
故意犯だ! 完全な故意犯!
「ま、ま、せやけどな、その、二つ頭の子にもけっこう、効きよんねん! でっかいのにな!」
むーん。でっかいのに効いたかーー。まあ魔力の少ないタイプの魔獣で魔力耐性も強くない。むしろどっちかというと効きやすいのかもしれない。
とにかくその後も幾つかの“テスト結果”について語るアデリア。聞いていると確かに思ってたよりかは効果が高い。
いやしかし待てよ、と考え直し、ダンジョン管理の
『工房区画による補正が一つ』
───あ、忘れてた。このダンジョンでは区画の設定によって、そこでの行動に補正がかかり、工房として設定された区画では制作の効率やその成果、完成度が良くなるんだっけ。
今まで工房区画はインプによるアイテムや設備作り、大蜘蛛による魔糸及び布作り、そしてガンボンの鍛冶細工仕事等々に使わせては居たけど、僕自身が付呪をしたのは初めて。なので僕の付呪の効果まで補正され向上しているとは知らなかった。
『それと、アデリアが最初に魔力を“オソロシ丸”に籠めた際の魔力は、ジャンヌにより刺激されたものだ。そのためジャンヌの純度の高い魔力が一部混ざりあっている』
あー、そうか。
【魔力通し】による魔法効果は、そこに籠められた魔力の質により変化する。
アデリア自身の魔力は正直とても弱いし純度も低い。何というか、ノイズ、不純物の多い魔力だ。
ジャンヌは元々魔力が多い体質で、質も濃さも純度も高い。それが一部混ざったことで、なんというか「高級オイルが混ざった状態」みたいになったんだろう。
───つまり、僕の想定以上に“オソロシ丸”が効果を発揮しているのは、二つの「想定外」によるもの……と言うことか。
とは言え、それだってちょっと「想定以上に」威力があった、というだけで、全体としてアデリアが糞雑魚ナメクジ弱いこと自体には変わりはないのだから、
「アデリア。たまたま、思っていた以上に、効果が出ただけで、油断しては、いけません」
ノー褒めです、ノー褒め。
「ええーーー!?
けど、これやったらアタシかて役に立つやんかー?」
「【恐怖】の魔法が効くか効かないかは、結局相手によります。それに、アデリアには剣の技が無いです。
敵に襲われて、上手く行けば、逃げ出せる、追撃を逃れられる。“オソロシ丸”はあくまでそういう武器です。
敵を、倒す武器では、ありません」
“オソロシ丸”が効こうが効くまいが、アデリア自身に“敵を討ち果たす”力はないのだから。
「うぅ~~……そう……やけどォ~~……」
厳しいことを言うようだけども、どんなに口を尖らせてもこればかりは仕方ない。認めなくっちゃ、現実を。
と、その時。ダンジョンハートのキーパーデスクの方に通信が入る。
このデスク、びっくりするくらいに前世におけるパーソナルコンピューター的な多機能デスクで、基本はダンジョン製作及び管理の為の機能が多々あるのだけど、この通信機能は例のケルッピ組の低層階に建てた大型
けどあそこの管理は使い魔(仮)のケルッピさんに任せてある。使い魔であるケルッピさんとはデフォルトで思念での通話が出来るから、わざわざ
『おい、何だ? これで……ああ? 通じてんのか?』
聞こえてくるのはジャンヌの声。側についてるのはケルッピさんらしいけど……おおう、言葉は通じないものの意志疎通をしているっぽい。
『おい、レイフ、聞こえてるか?』
「はい、聞こえてます。ジャンヌですね? どうしたのです? 何故低層階に居るのです?」
そう。通信してきたのがジャンヌなのは分かったけど、何故に下に居るのよ?
『アデリアの馬鹿が行方不明だ。下に行ったみたいなんだが、全然見当たらねえ。そっちの変なヤツで探せねーのか?』
……あらら、行き違いか。
ちらりとアデリアを見やると絵に描いたような「テヘペロ」的な表情。イタズラのバレた子供みたいなお茶目顔だ。
「アデリアは、もう戻って来てます。ジャンヌも、早く、こちらに」
下は現地採用もケルッピさんによる召喚も含めてそこそこ戦力はあるが、現在灰色岩鱗熊による「ドワーフ守護ゴーレムぜってーぶちのめす」モードでやや不穏。現地採用の従属魔獣にしてもケルッピさんの召喚獣にしても、いわゆる完全な隷属、支配ではないため、不平不満が溜まるとブチギレて反乱起こされたりもする。
特に灰色岩鱗熊はここのところ負け続きでストレス溜まってるから、ちょっとヤバい。奴の従者設定にしている中では比較的古参の大蜘蛛部隊は、奴がブチギレて暴れ出したりしたとき即座に取り押さえる為のお目付役でもある。
『はァ!? 何だとあのバカ、勝手にうろちょろしやがって~……』
悪態をつくジャンヌの声に、アデリアがうひィ! と小さく悲鳴。
うんうん、後でたっぷりと怒られなさい。
『……まあいいか。あとそれよりよ』
何故かこの件については軽く切り上げ、別の話へと進める。
『ドワーフ遺跡っぽいとこ、あるだろ? そこに外から何人かの集団が来てるっぽいっつーんだけどよ。そっちの机でも確認出来るんだろ? そーゆーのよ?』
え? と、驚きパネルを確認しつつ“生ける石イアン”へと聞くと、
『まだキーパーの支配領域ではないが、確かに近づいて来ている』
と。
「ええー!? ちょっとそういうの早く言ってよ!?」
『キーパーの支配領域が攻撃されているわけではない』
いや、まあそうかもしれんけどさあ! 融通効かないなあ!
「どんな相手か分かる?」
『現時点で分かるのは───魔獣ではないということだ、キーパーよ。
明確な自我と意志を持つ者達。キーパーと近しい者達だ』
てことは、つまりヒトに近い者?
人間、エルフ、ドワーフ、獣人、ゴブリン、コボルト……或いは───?
とにかく、素早く偵察を送りどんな相手か確認しないと……と、ケルッピさんへと新たな指示を送ろうとし始めたところ、ジャンヌからさらなる発言。
『ちょうど下に居るし、この水の馬と一緒にちょっくら様子見てくるわ』
……って、またもええー!?
「え!? 駄目、です! 相手、分からない! 危険、かもしれない!」
『だからそれを確認しに行くんだろ? 別に勝手に喧嘩仕掛けたりしねーからよ。ちょっと見てくるだけだ』
と、それだけ言うと一方的に通信を終わらせてしまう。
ちょ、ちょ、ちょっと待ってジャンヌさーん!? いやケルッピさん、止めて! 止めてって……え、何? もしかしてケルッピさんまでノリノリなの!? ちょっとォ!? 仮契約とは言え契約者は僕よォ!? こっちの指示を優先してェ!?
まるっとするっとこちらの意向をスルーされる。むむー、自由裁量なんて与えたからか? それともまさかケルッピさんまでも反乱の兆し!? ケルッピさん、お前もか、的な!?
何故かコンタクトまで切られてケルッピさんには指示だしも出来ない。となるともう直接行って止めるか、先にその「近くまで来た集団」の所に行くしかない。
直接……と言っても勿論【憑依】を使ってだけどもね。
とりあえず大蜘蛛アラリンさんを呼び出してアデリアを糸で拘束。
「へ? え、ちょっ、何でぇ!?」
「今から、少し、術を使います。その間、勝手に、どこか行かないように」
アデリアのことだから、また勝手に下へ行ってジャンヌの後を追いかけたりしかねない。
「えー!? 何、ちょっとレイちゃん束縛激しい系~!?」
そして……んーむ。ここは戦力としては弱いが速度を優先してフライ系か、最も馴染んでて極端な過不足のない猫熊インプか、偵察にはやや不向きだが戦力としては強めの金色オオヤモリか……。
けど、金色オオヤモリはまだ全然馴染んでないから、多分【憑依】し辛いだろうなー。
もう一、二体ほど連れていけると良いけど、その組み合わせも悩みどころ。連れて行くなら離反の可能性が低い者にしたい。例えば戦力としては抜群でも灰色岩鱗熊あたりは何をしでかすか分からないから遠慮したいところ。それ以前に偵察役には向いてないけど。
そう頭の中で様々なパターンを試行錯誤しつつキーパーデスクの“味方”一覧を見続けていると、あれ? と思う名前に目が止まる。
へ? あれ? これ……いつ?
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