第21話 八つの頭

 向こうに小さな洞穴が見えてきた時です。

 後ろからガザァガザァと音がして、みんなが振り返りました。

 驚くべきことに、先ほど倒した大蛇よりもはるかに巨大で、頭が八つに分かれた大蛇がそこにいました。

 マガタマ姫がフジマルヒコに尋ねます。

が、あまたの大蛇ですか?」

 するとフジマルヒコは、

「そうです。は頭が賢く、素早いのです。村人たちは今まで何人もに殺られてきたのです。」

と答えました。

 スサノオノミコトは、

「それでは今、を倒そうではないか?」

と言いました。

 しかし、フジマルヒコは

「今はまだ早すぎます。」

 と言った途端、スサノオノミコトはに立ち向かったのです。

 彼は剣を振りかざし、大蛇に突き刺しますが、松ヤニを塗った剣でも傷ひとつつけられません。

 そして、他の頭の大蛇が襲ってきました。

 マガタマ姫たちは逃げるのをやめ、スサノオノミコトを助けるために戦うしかありませんでした。

 サザナミが貝を投げ、その隙にスサノオノミコトは逃げることは出来たのですが、サザナミの攻撃も通用せず、貝はあまたの大蛇の体を滑り落ちるだけでした。

 マガタマ姫は、勾玉を光に当て攻撃しましたが、夕暮れの光では、強い光を集めることが出来ず、大蛇には通用しません。

 ツチマルヒコは地面を叩き、土や砂を舞い上げます。

 しかし、大蛇はただ体を揺らすだけでした。

 カゼマルヒコも、その土や砂に乗り、攻撃を試みますが、大蛇の体を滑り、攻撃は通用しません。

 フジマルヒコは、みんなに洞穴に逃げ込むように言います。

 このままでは皆が餌食になると考えたからです。 

 みんなは素早く逃げようとしますが、大蛇は容赦なく攻撃を続け、すぐに追いつかれます。

 しかし、攻撃も通じず、マガタマ姫たちは洞窟にたどり着けません。

 皆は疲れ果て、もう限界かと思っていました。

 その時です、フジマルヒコが手裏剣を、あまたの大蛇に向けて投げました。

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