第17話 案内人

 草原に広がる小さな村で、ひとりの少年が暮らしていました。

 その少年の名はフジマル。

 彼は幼い頃から音を聞き分ける才能に恵まれており、真珠貝の湖の存在も、貝の口を開ける音や水の音で見つけたのでした。

 彼は、大蛇の響きすらも識別できるほどだったのです。

 フジマルは、自分の能力がスサノオノミコト様やマガタマ姫の力になることを信じていました。

 彼が言うには、その村の森は他のどこと比べても異彩を放っていました。木々も動物たちも、なぜか一回り以上も大きいのだといいます。

 そんな話をすると、マガタマ姫も「確かに」と微笑みました。

 彼女も何かしらの変化を感じていたのでしょう。

 土や空気の関係で、何かしらがこの森を特別なものにしているのかもしれないのです。


 そしてある日、マガタマ姫がフジマルに頼みごとをします。

 彼が彼女たちの案内役になってくれることを。

 その申し出に、フジマルは喜んで応じました。

「私がお役に立てるなら、どんなことでもします」と彼は微笑みました。


 すると、マガタマ姫は「今後はあなたをフジマルヒコと呼びますね」と告げました。

 マガタマ姫は不思議な力を持つ者たちを「ヒコ」と呼ぶのでした。

 そこでフジマルは、「フジマルヒコ、分かりました」と答えました。

「素敵な名前ですね」と彼は付け加えました。


 フジマルヒコの案内のもと、一行はあまたの大蛇を探しに森へと向かいます。

 真珠貝の湖を通り過ぎ、森の奥深くへと進んでいく中、フジマルヒコが突然、「水の流れ落ちる音がします」と言います。

 しかし、サザナミは

「何も聞こえない。」

「そうだ、何も聞こえはしない」

 とスサノオノミコトもそう言ったのです。

 すると、マガタマ姫が、

「もしそれが滝ならば、あまたの大蛇は滝の近くにいると聞いたことがあります」と言ったのでした。


 フジマルヒコは、かつて村人が山奥で滝を見つけ、水を飲もうとしたところ、あまたの大蛇に襲われそうになって命からがら逃げ帰った話を思い出しました。「私が聞いた話でも、そういうことがありました」と語ります。

 これにマガタマ姫は、「とにかくフジマルヒコの音を聞き分ける力を信じてみましょう!」と、フジマルヒコの案内で水の音がする方向へ進んでいきました。


 しかし、しばらく歩いても滝らしいものは見当たりません。

 みんなはやはり滝などないのか…と少しあきらめていましたが、その時、木々や動物たちが普通とは異なる雰囲気を醸し出す森が現れたのです。

 そこからさらに歩き続けます。

 一行はさすがに疲れ果て、マガタマ姫は少し休むことを皆に伝えました。

 ツチマルヒコはフジマルヒコに本当にこの方角で間違いないのかを確認します。

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