第3話 龍の持つ玉
やがて立つことができ、体の痛みも取れ歩くこともできるようになったのです。
しかし、その頃にはあの大きな魚は角さえも食べつくし、骨だけになっていました。
ちょうどその頃、マガタマの父マガヒコと母トミタマは、マガタマがいなくなったことに心を痛め、マガタマを探してあらゆるところを尋ね歩いていたのです。
天照大神もそのことを聞きつけ、スサノオノミコトと共にマガタマを探したのでした。
一方、マガタマは洞窟に流れ込んだ流木を乾かし、火を起こして魚や貝を食べていました。
近くにある海藻や小魚を捕まえ、なんとか生き延びていたのです。
そしてある日、マガタマは洞窟が奥に続いているかを確かめるために奥へと進んでいきました。
奥へ奥へと進むうちに、外の光が入ってこなくなったときです。
急に目の前が強い光で輝いたのでした。
それを見たマガタマは驚きました。
水晶がまばゆいばかりに一面に広がっているではありませんか!
やはり、ここには水晶があったのだ。
と自分の水晶で調べる力を確信しました。
そして、その水晶を手にすると、その力が体に入ってくるのを感じたのです。
驚きと喜びに胸を躍らせながら、マガタマは力を感じた水晶を持って元の場所へと戻っていきました。
すると、海の方を見て驚いたことに、洞窟の入り口の岩と岩が重なった場所が外の光に照らされ、龍の形をしているではありませんか!
不思議な自然の産物に心を躍らせながら、マガタマはその光景を見つめました。
しかし、マガタマがいる洞窟は海からも見づらく、外から洞窟を見つけるのは困難でした。
マガタマは火を起こし魚を焼き、どうにか生き延びていました。
そしてちょうどその時、天照大神たちがマガタマの近くまで来ていたのです。
天照は近くにマガタマの気配を感じ取り、洞窟の近くまで来ていました。
すると、崖の横から煙が立ち上がっているのを不思議に思った天照たちは、マガタマの存在を確信しました。
外からは見えなくても、海から煙の立つ場所へ行ってみることにしたのです。
マガタマは助けが来ることを信じ、洞穴の奥で見つけた力を感じた水晶をできるだけ集めていました。
そして、天照大御神たちが船で現れたのです。
マガタマは涙ぐんで喜びました。
天照に洞窟で見つけた力のある水晶を見せ、「この水晶で天照大神様のお気に召す彫り物を作ります!」と誓ったのでした。
家に戻ったマガタマは、父と母に心配をかけたことを謝り、無事に帰ってきたことを喜び合いました。
それからマガタマは天照から依頼を受けていた彫り物を、洞窟から持ってきた水晶で一生懸命作り始めました。
ある夜、マガタマは不思議な夢を見ました。
洞窟で暮らしていた日々が蘇るかのように、夢の中で洞窟の生活を体験したのです。
すると、そこに龍が現れました。
龍が玉を持ちながら天に舞い上がる姿が、鮮やかに目の前に描かれたのです。
龍の持つ玉は水を帯び、まるで魂のように尾を引いているかのようでした。
目を覚ました瞬間、マガタマの心にはその夢の光景が強く残りました。
そして、自分自身の手で龍の持つ玉のような美しい水晶を作りたいと思ったのです。
それからは、毎日のように水晶を掘り、形を整える日々が続きました。
やがて、マガタマが作り出した水晶の彫り物が完成しました。その彫り物には、素晴らしい曲線の形があり、水晶のまばゆい輝きが全てを包み込んでいました。見る者に今までにない力を感じさせるような、まるで魂を宿したような彫り物が、マガタマの手から生まれたのです。
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