Column5 「温かい」と「暖かい」の使い分け②
前回に引き続き、「あたたかい」について取り上げようと思います。
今回考える例文は次のものです。
――あたたかそうなコートを
この場合は、「暖かい」を使います。
もしかすると、「『温かい』では?」と思った方もいるかもしれませんね。コートは物なので触って温度を確かめることができますし、空間をあたためるわけではないですから。
「あたたかそうなコート」を考える場合は、コートと体の間にある空気に注目すると分かりやすいです。
「暖かい」は「気温や身の回りが、程よい高い温度に保たれていること」(Column4参照)ですから、その空気が「温度を保っている」と考えると、「暖かそうなコート」に納得していただけるのではないでしょうか。
これも、辞書によっては「温かそうなコート」という表記を可としているものもありますが、大抵の辞書は「暖かそうなコート」なので、特別理由がないときはこちらを使うのが無難かなと思います。
そういえば、「コートそのものに、程よい高さの温度があるとき」はどうでしょうか?
例えば、冬の寒い部屋にあったコートは触れると「冷たい」と感じますし、
日向で「あたためられる」ということは、「暖かい」かな……と思うのですが、この場合は「温かい」を使うのが一般的です。私たちがコートに触れて温度を感じるからです。
ここまでくると、大体「温かい」と「暖かい」の区別がつくようになってくるのではないでしょうか。
もし、どうしても「『温』と『暖』の区別をつけるのが難しい!」というときは、「温かい」の反対である「冷たい」が当てはまるか、「暖かい」の反対である「寒い」が当てはまるかを比べます。
「温かい」↔「冷たい」
「暖かい」↔「寒い」
今回の「あたたかそうなコート」であれば、反対に当てはまるのは「寒そうなコート」です。「冷たいコート」とすると、コートに触れた温度そのもののことを指してしまうので、「『温』ではない」と判断することができるのではないでしょうか。
「温かい」と「暖かい」の区別の仕方は、辞書の見解を見ても分かるように容易ではありませんが、一般的な方向性を捉えるのであれば、これに従えば大抵は解決するかと思います。(『漢字の使い分けときあかし辞典』より)
もし悩んでいらしたら、試してみてください。
「あたたかい」についてそろそろ終わりたいところですが、もう一つ説明したいものがあるので、よかったらお付き合いください。
◇掲載場所◇
『NIHONGO ‐Ⅱ‐』2022年―5月―Column1の補足として加筆
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