「こ」

Column1 「号泣」は単に「大量に涙を流すこと」?

 今回は、「号泣」の意味について考えてみたいと思います。


     ☆


 ——感動のあまり、映画館で号泣した。


 一見、よくありそうな一文かと思います。

 かみ砕いて説明をするなら、「感動のあまり、映画館で大量の涙を流した」という風になるのではないでしょうか。

 

 ですが、そのように捉えてしまうと「号泣」の本来の意味から離れてしまいます。


「号泣」を辞書で調べてみると、「大声をあげて泣くこと」『明鏡国語辞典 第三版』より引用)とあります。

 そのため、ただ「大量の涙を流した」場合に、「号泣」を使うのは適切ではないのです。


「号」という漢字を『全訳 漢辞海 第四版』で調べてみると、「声高に叫ぶ」とか「声を出して泣き叫ぶ」という意味が記載されています。このことからも、大きい声を出して泣くことこそが「号泣」であることがお分かりになると思います。


 そのため、映画館で作品を見て感動し「映画館で号泣した!」という感想を述べていたら、「映画館で大声をあげて泣いた!」になってしまうのでご注意を。


 ただ、多くの方が「号泣」=「沢山涙を流すこと」のように捉えているため、『三省堂国語辞典 第八版』(第七版でも記載有)では俗語として「大いになみだを流すこと。『静かに号泣する』」という用例を掲載していました。


 また『新明解国語辞典 第八版』では、「(涙を見せたことのないような人が)感きわまって(大声をあげて)泣くこと」と記載してありました。「大声をあげて」が括弧に入っているところを見ると、必ずしも声をあげて泣くことを言うわけではないですが、広がりつつある使い方も組み入れた書き方がされていますよね。


 ですが、『三省堂国語辞典 第八版』『新明解国語辞典 第八版』以外では、認めていないようでしたので、使用する際は注意する必要がありそうです。



◇掲載場所◇

『NIHONGO ‐Ⅱ‐』2022年―8月―Column1


*2024.4.21訂正

「号泣」の俗語について「静かに沢山涙を流すこと」と書いておりましたが、正確には「静かに」はなく、単に「沢山涙を流すこと」「激しく泣くこと」という風に使われていることが改めて調べた際に分かりました。


「映画館で号泣する」という、大声をあげることがないであろうシチュエーションのイメージに引っ張られ、「静かに沢山涙を流すこと」と書いてしまったのが要因と思われます。


 この度は、誤った情報を記載して申し訳ありません。

 現在は「静かに」の部分を削除して掲載しております。

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