Column2 「姑息」は「卑怯」という意味?

 今回は、「姑息」について取り上げようと思います。


     ☆


 ——あいつは姑息な奴だ。


 皆さんは、このような一文を見たことはあるでしょうか。

 内容を解釈すれば「あいつは卑怯な奴だ」と捉えられそうですが、「姑息」を「卑怯」とするのは、実は本来の意味ではありません。


「姑息」の「姑」には、「しゅとめ」の他に「ひとまず。しばらく」という意味があります。つまり元々は「しばらくの間息をつくこと」。それが転じて「一時的にその場を切り抜けることができればいい」というのが本来の意味なのです。


 ですが、文化庁が行っていた「国語に関する世論調査」の令和3年の結果では、本来の意味とされる「一時しのぎ」と認識している人は全体の17.4%で、本来の意味ではない「ひきょうな」と認識している人は全体の73.9%だったそうです。(『デジタル大辞泉』参照)


 漢字の成り立ちからすると、「卑怯」という意味として捉えるのは中々難しいため、複数の辞書では「『卑怯な』や『卑劣な』という意味で『姑息』を使うのは本来は誤り」としています。

 その一方で、「国語に関する世論調査」からも分かるように、多くの方が本来の意味ではない方を使っていることから、俗語*1として認めているものも複数ありました。


 それにしても全体の七割を超える人たちが、「本来の意味ではない方」で使っているということは、「本来の意味」で使ったときに誤解される可能性もありそうですよね……。そう思うと、使う際は「姑息」の本来の意味として使っているのか、本来の意味ではない方で使っているのかひと工夫する必要がありそうです。


 皆さんは、本来の意味としての「姑息」を使うでしょうか。それとも、本来の意味以外の「姑息」を使うでしょうか。



◇掲載場所◇

『NIHONGO ‐Ⅱ‐』2022年―6月―Column10


【補足】

*1「俗語」……世間で日常的に使われる話ことば。俗言。(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)

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