Column3 「議論が煮詰まる」を「議論が進まなくなる」と解釈するのは間違い?

 今回は、誤用として取り上げられることのある「煮詰まる」という言葉について、考えたいと思います。


     ☆


 ――議論が煮詰まる。


 上記の例文を読んだとき、「議論がのだ(*1)」と解釈した方はいらっしゃるでしょうか。


 そのように解釈されることも多いですが、本来の意味は「議論や見当が十分になされて、結論の出る段階になる」(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)という意味です。つまり「結論が出なかった」のではなく、「結論が出そうな状態になった」と捉えるのが適切です。


 料理をする方ならきっと分かると思いますが、「煮詰まる」とは「煮えて水分がなくなる」(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)状態。それは転じて「料理が出来上がりそうな状態に近づいた(もしくは出来上がった)」と言えますよね。

 この考えを元に「議論を煮詰まる」を改めて考えると、自ずと本来の意味にたどり着くことができるかと思います。


 とはいうものの、「煮詰まる」=「行き詰る」と解釈する人も多くなってきていることもあり、辞書によっては容認しているものもありました。

 十一冊の辞書を引きましたが、そのうち四冊が「容認」、二冊が「どちらかというと容認」、四冊が「容認せず」、残りの一冊は「どちらとも言えない」――でした。


 全体的に「煮詰まる」=「行き詰る」を認める雰囲気が出てきてはいるものの、まだ認めていないものもあることから、使う際は作者さんの判断に委ねられそうです。


 皆さんは、「煮詰まる」を「行き詰る」という意味として使うでしょうか?



◇掲載場所◇

『NIHONGO』2021年―7月―Episode15


【補足】

*1「行き詰る」……物事をそれ以上先へ進められなくなる。『明鏡国語辞典 第三版』より

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