「み」

Column1 「見栄」と「見得」の違い

 今回は、「見栄」と「見得」について取り上げようと思います。


     ☆


①「みえ」を張る。

②「みえ」を切る。


 上記に二つの慣用句を挙げました。

「みえ」とひらがなで書いているのですが、ここに入る漢字は分かるでしょうか。


 もし「①には『見栄』が入り、②には『見得』が入る」とお考えになっていたら正解です。個人的にはこの二つは混同しやすいのではないかな……、と思うのですがいかがでしょう。


 さて。

「見栄」と「見得」は、どちらも当て字です。そういうこともあってか、新聞や公用文では「見え」と書きます。


「見栄」は「人目を意識して、うわべを実際よりよく見せようとすること」(『明鏡国語辞典 第三版』より)で、「見得」は「歌舞伎の演技・演出の一つ。役者が感情の盛り上がった場面でその動作を一時静止し、にらむようにして一定の姿勢をとること」(『明鏡国語辞典 第三版』より)という意味があります。


 そのため「見栄を張る」には「ことさらにうわべを取り繕う」(『明鏡国語辞典 第三版』より)、「見得を切る」には「ことさら自分を誇示するような態度をとる」(『明鏡国語辞典 第三版』より)という意味があります。後者は特に、歌舞伎のことを考えると分かりやすいですよね。


 もし表記に迷うのであれば「見え」とするのもよいですが、「見栄」と「見得」のことを理解したうえで使い分けられると、どちらの意味で使っているのかが分かりやすくなるかもしれませんね。



◇掲載場所◇

『ことば』2023年―10月―Column2


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る