Column2 「三日とあけず通いつめる」?

 今回は、「三日とあけず通いつめる」という慣用句について取り上げようと思います。


     ☆


 突然ですが問題です。次のうち、正しい表記はどれでしょうか。



①三日とあげず通いつめる。

②三日とあけず通いつめる。

③三日にあげず通いつめる。

④三日にあけず通いつめる。



 四つの例文を良く見ると「と」と「に」の違いと、「あげず」と「あけず」の違いがあるのが分かります。

 一つずつ声に出してみると、聞き馴染みのものも出て来そうですが、いかがでしょう。



 さて、そろそろ答えは出たでしょうか。

 正解は――③です。どうでしょう。当たっていましたか?


「三日にあげず」というのは、慣用句です。意味は「三日とたたないうち」や「しばしば」「しょっちゅう」というもの。


 しかし「三日」の意味は分かっても、「あげず」は何なのか分かりませんよね。ということで、調べてみました。


「あげず(上げず)」には、「同じことを何度も繰り返す際に、次の回までの間に、それだけの隔たりを置かない様子」(『新明解国語辞典 第八版』より引用)という意味があります。要は、「間を置かず」というを「あげず」は示しているのです。


 疑問はもう一つあります。何故「三日あげず」という誤った言い方があるのでしょうか。

 これは私の考えですが、「と」には下に打消しをともなって「三日と続かない」などと言うような言い方があるからだと思われます。


「三日と続かない」という場合の「と」は、「わずかそれだけの数量なのに…ない」(『学研現代新国語辞典 改訂第六版』より引用)という意味で使われます。そのため、「三日と続かない」は「『三日』という短い間にもかかわらず、続かない」と解釈できます。


 一方の「三日にあげず」の「に」というのは、「(その状態を認めさせるものとしての)基準や対象を表す」と考えられ、「三日」を基準に「同じことを何度も繰り返している」と解釈できます。……というのは、辞書を調べて私が考えたにすぎませんので、テキトウに聞き流してくださいませ(笑)


 ちなみに、この言葉は古語辞典にも載っていて、今と同じように使われています。


 音だけで覚えていると「三日とあけず」と書きそうになりますが、「三日にあげず」と使えるといいですよね。



◇掲載場所◇

『NIHONGO ‐Ⅱ‐』2022年―11月―Column14

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