ら行

「り」

Column1 「リンクをはる」は「貼る」? それとも「張る」?

 今回は、「リンクをはる」の「はる」に当てはまる漢字について、考えてみようと思います。


     ☆


 インターネットであるページから別のページに移動できるようにするため、「リンクをはる」という表現を使おうとしたときのことです。「貼る」にするか、それとも「張る」かで迷いました。


 最初、「リンクを貼付ちょうふする」や「貼り付ける」という表現もあると思ったので、「『貼る』かな?」と思ったのですが、『明鏡国語辞典 第三版』を引いたら「リンクを張る」と書いてありました。


 何故「張る」なのかというと、「『張る』の意味のなかにある『線状・膜状のものを伸ば』すものに部類し、『通信・連絡・連帯が可能な状況を作り出す』」からなのだとか。(『明鏡国語辞典 第三版』を参照)

 

 言われてみると、「インターネット」の「ネット(net)」は「網」という意味があります。そして「インターネット」とは「世界じゅうのコンピューターをつなぐ通信ネットワーク(『三省堂国語辞典 第八版』」ですから、「張る」が当てはまるのも納得です。


 では「リンクを貼る」は間違いなのかな……と思いつつ、念のため『新明解国語辞典 第八版』を引いてみたら、「リンクを貼る」と書いてありました……。


 うーむ、結局どっちなのか……。ということで、下記に調べたものをまとめてみました。



●「リンクを貼る」という表記の辞書

『新明解国語辞典 第八版』


●「リンクを張る」という表記の辞書

『明鏡国語辞典 第三版』『三省堂国語辞典 第八版』『三省堂現代新国語辞典 第六版』『学研現代新国語辞典 改訂 第六版』『旺文社国語辞典 第十一版』『デジタル大辞泉』『岩波国語辞典 第八版』『旺文社 標準国語辞典 第八版』


「リンクをはる」の用例があったものを並べてみました。見ていただいた通り「リンクを張る」が優勢です。というより、『新明解国語辞典 第八版』以外「リンクを貼る」を掲載している辞書はありません。


 そうなってくると今度は何故『新明解国語辞典 第八版』では「リンクを貼る」としていたのかが謎になってくるのですが、私が冒頭で考えたように「リンクを貼り付ける」という言い方があるからかな……と素人ながらに思いました。


 実際のところは分かりません。

 ただ、多くの辞書が「リンクを張る」としているので、この表記の方が一般的なのかなと思います。



◇掲載場所◇

『ことば』2023年―9月―Column7 

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