Column2 「おもたせ」は「もらったお土産」の尊敬語

 今回は「おもたせ」の使い方について、取り上げようと思います。


     ☆


 数年前の話です。食品を扱うサイトを検索していたときのこと、「おもたせ」という言葉が、下記のように使われているのを見ました。


 ――日持ちのよさから、おもたせにもぴったりです。


「おもたせ」とは、「もらったお土産」の尊敬語です。


**********

【おもたせ】『三省堂国語辞典 第八版』

相手の持ってきた おみやげの食べ物に対する尊敬語。[相手にすぐに出すときに言う]

「おもたせで恐縮ですが、どうぞ」

**********


『三省堂国語辞典 第八版』の例文にもありますが、お土産をもらった人がそれを持参した人に出すときに使うので、食べ物のお土産に対して使われます。


 さて。

「日持ちのよさから、おもたせにもぴったりです」というキャッチコピーに戻りましょう。察するに、商品を買った人が、お土産として持って行くものについて敬っているのだと思います。


 しかし、この使い方は本来誤りです。

 それは「もらったお土産」に対して使う尊敬語を、自分自身(お店側からすればお客さまなのですが……)のお土産に対して使っているから。敬語の仕組みを考えると、敬う相手が誤っていることになります。


 ですが最近は、例文にあげたような、「お土産」として買われる商品のキャッチコピーに入っていることが増えてきているそうです。


 個人的には「おもたせ」を「自分が持って行くお土産」として使うのは違和感があるなぁ……と思いますが、皆さんはどう感じるでしょうか。



◇掲載場所◇

『ことば』2023年―9月―Column5

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