Column2 「入れる」「容れる」「淹れる」の使い分け

 今回は「いれる」と読む、漢字の使い分けについて考えたいと思います。


     ☆


「いれる」にはタイトルにも挙げたように、「入れる」「容れる」「淹れる」の三つがあります。(他にもありますが、今回は主要なものを取り上げています)


『漢字の使い分けときあかし辞典』を参照してみると、「いれる」という言葉を漢字で表現する場合「『入れる』が一般的に用いられる漢字である」と記載があります。

 つまり「いれる」は、全て「入れる」と表記できるということです。(そのほかにも『明鏡国語辞典 第三版』『新明解国語辞典 第八版』『三省堂国語辞典 第八版』『新選国語辞典 第十版』を確認しましたが、どれも同じ見解でした)


 では、「容れる」と「淹れる」はどんな場面に使えるのでしょうか。


 まずは「容れる」。

 これは「容器」という熟語をみても分かるように、「容」には「(うつわなどに)いれる」「収納する」という意味があります。またそこには「受け入れる余裕がある」というニュアンスが含まれており、転じて「受け入れる」「許す」というような意味に発展します。


 そのため「他人の主張を聞き、その意見に理のあることを認める(『新明解国語辞典 第八版』より)」という意味で使う場合、例えば「要求をいれる」や「忠告を聞きいれる」などは「容れる」が使えます。


 次に「淹れる」。

「淹」は元々「水に浸す」という意味があり、転じて「湯で煮立てるなどして飲むようにすること」場合に使われます。


 使用する注意点としては、「コーヒーをカップに淹れる」のように単純に「カップという容器にコーヒーを注ぐ」ような行為に「淹れる」は使えないということ。

 つまり「コーヒーを淹れる」というのは、「挽いたコーヒー豆にお湯を注いでいれる」状態でないといけないということです。


(例)

×コーヒーをカップに淹れる(「コーヒーをカップに注ぐ」ような意味として使っている場合)。


〇コーヒーを淹れる(「挽いたコーヒー豆にお湯を注いで煮だす」ような意味として使っている場合)。


 いかがだったでしょうか。「いれる」についてはどの辞書を見ても大体同じ見解なので、比較的使い分けのしやすい漢字かなと思います。



◇掲載場所◇

『NIHONGO -Ⅱ-』2022年―7月―Column2

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