Column3 「足をすくわれる」と「足下をすくわれる」
今回は「足をすくわれる」と「足下をすくわれる」について取り上げようと思います。
☆
①足をすくわれた。
②足
上記に挙げた二つの文は、「思いがけないことで失敗させられる」という意味で使われますが、②は「誤りである」とよく言われます。
「足下をすくわれた」が誤りと言われる理由は、「足下」が「立っている(または、歩いている)足の下(『明鏡国語辞典 第三版』より)」を指すため、そこをすくっても意味がないから――というものです。
しかし『三省堂国語辞典 第八版 』を引いてみると、「『足下をすくう』という形でも使う」と書かれていました。それは「足下」に「足先のほう」を示すこともあるからであると、辞書を見る限り考えられそうです。
また、『三省堂現代新国語辞典 第六版』では「俗に『あしもとをすくわれる』とも言うようになった」と書いてあるので、少しずつ辞書によっても認められてきているのが分かります。
ちなみに、「足をすくう」と「足下をすくう」のそれぞれについて、どれくらいの人が使っているのか、文化庁が発表した平成28年度の「国語に関する世論調査」は次の通りでした。
本来の言い方ではない「足下をすくわれる」を使っている方……64.4%
本来の使い方である「足をすくわれる」を使っている方は……26.3%
「本来の言い方ではない方を使っている方」が多いというのは、興味深い結果だなと思います。
上記に挙げた辞書以外に、『明鏡国語辞典 第三版』『新明解国語辞典 第八版』『新選国語辞典 第十版』『旺文社国語辞典 第十一版』『岩波国語辞典 第八版』『大辞林4.0』『大辞泉』も調べてみましたが、「『足下をすくう』は『誤り』もしくは『本来は誤り』」と書いていたり、そもそも「足下をすくう」という説明がなかったりと、認めていないものも多い印象でした。
よって、今のところは「足をすくう(足をすくわれる)」を表現として使った方が無難かもしれません。
しかし使う人も増えていることもあり、これからこの用法を掲載する辞書も増えてくるかもしれませんね。
*「足下をすくう」は「足元をすくう」と書く場合もあります。
◇掲載場所◇
『NIHONGO』2021年―11月―Episode4
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