Column13 「耳ざわり」の話
今回は「耳ざわり」という言葉について、取り上げようと思います。
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先日、ある動画を見ていたところ、出演者の方が「耳ざわりのいい言葉を話す人は……」と言っていたのを聞きました。
近年、「耳ざわりのいい」と言って、「耳に心地よい」という意味として使うことが増えてきているようです。
普通「耳ざわり」とは「耳障り」と書き、「聞いていて不快に感じること」(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)という意味として使いますよね。
一方、「耳ざわり」を「聞いたときの感じ」「耳当たり」という意味として使っている人たちは、「耳触り」と、「触」という漢字を当てて使っているようです。
しかし、本当にこのような使い方をしても良いのでしょうか。
この点について辞書はどのように捉えているのか、下記に調べた内容をまとめてみました。
●「耳ざわり」を「耳触り」と書いて「聞いたときの感じ」と捉えることを認めている辞書
『新明解国語辞典 第八版』『新選国語辞典 第十版』『三省堂現代新国語辞典 第七版』『岩波国語辞典 第八版』『精選版日本国語大辞典』『大辞林4.0』『デジタル大辞泉』(計七冊)
●「耳ざわり」を「耳触り」と書いて「聞いたときの感じ」と捉えることを俗語として認めている辞書
『三省堂国語辞典 第八版』『学研現代新国語辞典 改訂第六版』(計二冊)
●「耳ざわり」を「耳触り」と書いて「聞いたときの感じ」と捉えることを認めていない辞書
『明鏡国語辞典 第三版』(計一冊)
●おそらく「耳ざわり」を「耳触り」と書いて「聞いたときの感じ」と捉えることを認めていない辞書(⇒見出しがない・言及されていない・用例がないため)
『旺文社国語辞典 第十二版』『旺文社標準国語辞典 第八版』(計二冊)
全体を見るとばらついている感じはしますが、「耳触り」の用法を認めている辞典が多いかなと思います。
また、俗用を認めることがあまりない『岩波国語辞典 第八版』も、「耳触り」を認めていたので、人々の間で浸透してきている使い方であり、比較的歴史があることもいえるかなと思います。
「耳触り」が使われ出したのは、『精選版日本国語大辞典』を読む限り少なくとも1807年であることが分かっています。
つまり古くからの例文もあることから、認めている辞書が多いのではないかなと個人的には思います。
ちなみに私は「耳ざわりがいい」と音だけ聞くと、「耳障り」のほうが最初にイメージとして湧いてくるため「ん?」と思ってしまいます。そのため「耳触り」として使うには、もう少しなれないと難しいですね。
皆さんはいかがでしょうか。
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