Column11 「壮年」について
今回は、「壮年」について取り上げようと思います。
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先日、「壮年」という言葉を「働き盛りの男性」という意味として用いようと思ったのですが、昨今の多様性の考えから、もしかすると女性に対しても用いている可能性があるかもと、念のため辞書を引いてみました。
すると、ほとんどの辞典が、「働きざかりの年ごろ。また、その年ごろの人。三〇代から五〇代前半の人をさす。壮齢」(『旺文社国語辞典 第十二版』より引用)というような語釈を書いていました。当然と言えば、当然かもしれませんね。
ですが、調べた辞書の中で一冊、性別に言及しているものがありました。『三省堂国語辞典 第八版』です。そして「壮年」の項目には、補足として「多く男性を言い、広くは男女をふくむ」と書いてあります。
さらに不思議なのは、一つ前の版である『三省堂国語辞典 第七版』には、この補足がないんです。つまり第八版になってから、記載されたということ。
では、どうしてこの補足を入れたのでしょうか。
これは私の想像ですが、もしかすると人々が使っている状況や、漢字そのものの意味を考えて反映しているのかもしれないなと思いました。
「壮年」の「壮」という漢字には、「大きい男」とか「三十歳前後の男」という意味があります。それを知っている人からすると、女性に対して使うのは抵抗がある方もいるはずです。
ですが、世間では男女の平等を
「壮年」の漢字の意味を考えたら違うような気がするのに、言葉の表面にちらついているように見える「男女の差」というものによって、女性にも「壮年」と使わないといけなと考えている方もいるかもしれません。
そんなときに『三省堂国語辞典 第八版』の補足を読んだら、あえて使う必要はないと思えるのではないでしょうか。
皆さんがどう思うかは分かりません。
人によっては、「性別で使う言葉が分けられたくない」と思う方や、「言葉の元の意味は昔に考えられたものなのだから、現代にふさわしいように変えるべきだ」と思う方もいらっしゃることでしょう。
ですが私は、「壮年」の対応についてどうしようか悩んでいる人に対し、『三省堂国語辞典 第八版』が手を差し伸べているような感じがして、いいなと思いました。
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