Column5 「すべからく(須らく・須く)」の話
今回は、「すべからく」という言葉について取り上げようと思います。
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先日、ネットニュースを見ていたところ、次のような文章を見かけました。(いつものように、原文のニュアンスだけ残して他は変えてあります)
——SNSで悪口を言っている人は、すべからくカッコ悪いと俺は思う。
ここで使われている「すべからく」ですが、前後の文脈を読む限り「すべての人」というふうに捉えられると思います。
しかし、「すべからく」の意味はそれではありません。
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【すべからく】『明鏡国語辞典 第三版』より引用
〔古風〕当然なすべきこととして。ぜひとも。
<注意>「落ち武者たちはすべからやく討ち死にした」など、「すべて」の意に解するのは誤り。
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「すべからく」に「すべて」の意味がないということが、『明鏡国語辞典 第三版』の語釈から確認できたかと思います。
では、上記に挙げた例文に「すべからく」の本来の意味を当てはめるとどうなるかというと、「SNSで悪口を言っている人は、ぜひともカッコ悪いと俺は思う」となり、変な内容になることが分かりますね。
また『明鏡国語辞典 第三版』の<注意>にも書いてあるように、「すべからく」は「すべて」の意味で使うことが誤りとあります。それくらい、誤用されているということかもしれません。
ちなみに、「すべからく」を「すべて」として捉えている辞書は、私が調べた限りありませんでした。「すべからく」は、「須」を漢文訓読したことから生まれた言葉なので、元の意味を考えると、どうやっても「すべて」という意味にはならないということでしょう。
音が似ているので間違いやすいかもしれませんが、「すべからく」を使う際は「すべて」と混同しないように注意したいですね。
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