4月
Column1 「交替」と「交代」
今回は、「
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前回、「降板」について取り上げた際、次のようなことを記載しました。
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「降板」という言葉は、「野球で、交替をさせられて当主がマウンドをおりること(『旺文社国語辞典 第十二版』より引用)」という意味です。
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この中に「交替」という言葉がありますね。そして「こうたい」には、「交替」だけでなく、「交代」という熟語があることを皆さんはご存じかと思います。
しかし、この二つはどのように使い分けをすると良いのだろう……という疑問があり、今回取り上げてみた次第です。
さて。
PCで「こうたい」と入力すると、親切に説明が出てきてくれます。以下に引用してみましょう。
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【交替】『標準統合辞書』
かわり番こ.⇒交代.「交替(=交代)」で運転する,1日交替(=交代).」
【交代】『標準統合辞書』
入れかわり引き継ぐ.「ピッチャーが交代する,世代交代.」
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上記の語釈を見る限り、「交替」のほうは、「かわり番こ」とあるように、「かわるがわる入れ替わる」ほうに重きが置かれているようです。しかし、「=交代」という表記があるように、どうやら「『交替』と『交代』を同じように見ても良い」とも捉えられそうですよね。
一方の「交代」はどうでしょう。「入れかわり引き継ぐ」という風な書き方をされているように、「一回だけの入れかわり」のときに、この言葉が使われるようです。
しかしそれならば、「交替=交代」は成り立たないはず……。
さて、どうしてこのような矛盾が生まれているのでしょうか。
『漢字の使い分けときあかし辞典』を調べてみると、「替」という漢字には「別ものだけど同じもの」として捉える性質があり、「代」という漢字には「役割は同じだけれどする人が違う」ということを示す性質があることが書かれています。
例えば、「替」は「服を着替える」というふうに使えますね。
これは「服は別ものだけれども、『着るもの』であることは同じ」ということが言えます。
もう一つ、例を挙げてみましょうか。
「めがねを替える」というふうに使うこともあるかもしれませんね。
この場合も、「めがねは度の違うもの(もしくはフレームが異なっているなど違う点があるけれども)、『めがね』であることは同じ」ということが言えます。
では「代」を使うときを考えてみましょう。
例えば、「運転を代わる」というふうに使うことができますが、これは「『運転をする』という役割は同じだけれど、別の人がする」という意味を持ちます。
もう一つ、例を挙げてみますね。
「課長が代わる」となると、「『課長』という役割は同じだけれど、別の人がする」となります。
ここまでくると、PCの説明のように「ピッチャーが交代する」でもよいのではないかとも思って来るのではないでしょうか。何故なら、「『ピッチャー』という役割は同じだけれど、別の人がする」という点で同じだからです。
しかし、「代」にはもう一つ重要な性質があります。
それは「〝本来はあるものがすべき役割〟とか〝それまではあるものがしていた役割〟という意識がある」(『漢字使い分けときあかし辞典』より引用)というもの。
ピッチャーを使って具体例を挙げれば、「ケガをしたピッチャーを代える」というときに使えるということです。
つまり、ここで「代える」を使うというのは、「本来は、ケガをしなければその人物がピッチャーをし続けるはずだったが、別の人がする」という意味を含んでいることになります。
このように考えると、「交替」と「交代」を使い分ける意味や、PCの説明で「交替(=交代)」と書かれているのかが、分かってくるのではないでしょうか。
……と、ここまで説明してきましたが、新聞では区別せずに「交代」と使っていると『明鏡国語辞典 第三版』には記載があります。
また、辞書を引いてみると、「交替」と「交代」を区別していないものも案外多いです。一応下記にまとめておきますね。
●「交替」と「交代」を特に区別していないと思われる辞書●
『新明解国語辞典 第八版』『学研現代新国語辞典 改訂第六版』『三省堂現代新国語辞典 第七版』『旺文社国語辞典 第十二版』『デジタル大辞泉』『大辞林4.0』『精選版日本国語大辞典』
新聞の表記の仕方や辞書の語釈の内容から見ても、「交替」と「交代」の意味の違いが薄れてきているようにも見えます。
そのため厳密に考えなくてもいいのかもしれませんが、「使い分けをしたい」と考えているのであれば、上記のことを考えてみるとよいのかなと思います。
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