Column4 「タイムスリップ」と「タイムリープ」
今回は、「タイムスリップ」と「タイムリープ」について取り上げてみようと思います。
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たまたま読んだネット記事に「タイムスリップ」という言葉がありました。
意味は、皆さんご存じの通り、「SF小説などで、現実の時間・空間を超えて過去や未来の世界に移動すること」(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)です。
そのとき、ふと、「そういえば、『タイムリープ』という言葉もあったけど、あれとどう違うんだろう?」と思い、調べてみました。
すると、「現実の時間から瞬時に過去や未来に移動すること。多く、SFに描かれる」(『デジタル大辞泉』より引用)と書いてあります。
つまり「タイムスリップ」も「タイムリープ」も同じ意味で使われているということでしょう。
ただ、今回もいつも通り複数の辞書で調べてみたのですが、「タイムリープ」と書かれていたのは、『デジタル大辞泉』だけでした。「タイムスリップ」のほうが主流のようですね。
では、何故「タイムスリップ」の方が主流なのかを調べてみたのですが、どうやら「タイムリープ」は筒井康隆著の『時をかける少女』で使われた造語のようでした。(『時をかける少女』がお好きな方は、ご存じかもしれませんね)
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「<前略>タイム・リープ(時間跳躍)だな」
(『時をかける少女<新装版>』(角川文庫/改訂版H18.5.25)より)
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ここから「タイムリープ」は和製英語であることが分かりますね。ちなみに「タイムスリップ」も和製英語です。
・「タイムスリップ」は、「time」+「slip(滑り落ちる・踏み外す)」の組み合わせ。
・「タイムリープ」は、「time」+「leap(跳ぶ)」の組み合わせ。
そのため、英語で表現する際は「time travel」と使います。
……と、ここまで調べて思ったのですが「タイムリープ」が「時間を跳躍する」という意味で、「leap(跳ぶ)」という単語が使われているのであれば、「タイムスリップ」の「slip(滑り落ちる)」はなんだか不思議ではないでしょうか。
何故、時間移動をするのに「slip(滑り落ちる)」なのだろうか、と。
これは私の推測なのですが、『精選版日本国語大辞典』や『大辞林4.0』で「タイムスリップ」を調べてみると、「時空間のひずみに落ちて」とか「通常の時間から逸脱し」というような説明があります。
つまり、「タイムスリップ」の「slip(滑り落ちる)」は、「通常の時間から別の時間の流れに滑り落ちる(踏み外す)」という、そういう意味があるのではないでしょうか。
そして『時をかける少女』では、「時間を移動する」としても、「通常の時間から別の時間の流れに滑り落ちる(踏み外す)」というよりも、「時を飛んで移動する」という行為を表現するとき、「時間跳躍」のほうが適切だったのでしょう。
こういう細かいところに気づくと、物語を解釈するのがより面白くなるなと、個人的には思います。
*私は細田守監督が手掛けた映画『時をかける少女』は見たことがありますが、原作である『時をかける少女』は読んでいません。
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