Column7 「予言者」? それとも「預言者」?

 今回は、「よげんしゃ」の二つの表記について取り上げたいと思います。


     ☆


 ある作品を読んでいたときのこと。


 田舎住まいの青年(=「A」とします)が、雨が降るタイミングを当てます。

 すると、もう一人の青年(=「B」とします)が、驚きを持って「預言者ですか⁉」と尋ねるようなシーンがありました。(補足:Aは超能力ではないです。普通の人です)


 BがAに「よげんしゃ」と言うシーンは、この場面を含めて二つあります。物語の最初のほうと、中盤から少し後ろの辺り。そして前者は「預言者」、後者では「予言者」と表記していたのです。


 二つの表記が存在するのは、単なる見落としか、それとも「預言」の意味を知って「予言者」に変えたかどちらかだと思いますが、それはまあ、置いておきまして。


 辞書で調べてみると、「予言」と「預言」は似て非なるものであることが分かります。


「予言」とは「未来を予測して言うこと」。(『新明解国語辞典 第八版』より引用)


「預言」とは「キリスト教などで、神の霊感に打たれた者が神託としてのべることば」。(『三省堂国語辞典 第八版』より引用)


 このようにあります。

 さらに「預言」には、単に「預言する力を与えられた者」をだけをいうのではなく、「古代イスラエル民族に現れた宗教的指導者」や「イスラム教で、モーセやイエスなど神が啓示を伝えるために遣わした人」のことを指します。(『デジタル大辞泉』より引用)


 そのため「預言者」としてしまうと、「天候の予知をする人(ちょっと先の未来が分かる人)」を指すことにはならないというわけです。


 ちなみに辞書には「預言者」という見出しはあっても、「予言者」という見出しはありません。思うに「預言者」には「預言」とは別の意味が付加されるため、別に見出しが立てられたのだと考えられます。


 もし、未来を当てる人などを登場人物に出す際は、「よげん(しゃ)」にご注意を。

 

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