Column5 「看る」と「診る」の話
今回は、「看る」と「診る」について取り上げようと思います。
☆
「看る」と「診る」は、どちらも「みる」といいます。
「看る」には、「看護」や「看病」という熟語があるように「世話をする」という意味があり、「診る」には「診察」や「診療」という熟語があるように、「医者が患者の体を調べる」という意味があります。
そのため、「風邪をひいた子どもの面倒をみる」であれば「風邪をひいた子どもの面倒を『看る』」と書き、「医者がみる」であれば「医者が診る」となります。
ですがある作品を読んだとき、面白いなぁと思った書き方がありましたので、ご紹介しようと思います。
ある国の王が、「医師ではないが医術の心得がある者」(=仮に「A」とします)に次のように言ったセリフがありました。(ニュアンスだけ残し、原文を変えてあります)
——妃の調子がよくない。見てくれないか?
この場合、もし診察するのであれば「診て」でも良いように思います。
ですが、医術の心得があってもAは医者ではありません。そのため「診る」が避けられたのだと考えます。
しかしAはのちに、妃を看病をすることになります。それを考えると「看る」も可能です。
では、何故「見」が使われたのでしょうか。
複数の見解が考えられますが、Aが医者ではなかったことと、王はAが妃の看病をするということまで考えていなかったからだろうと考えます。妃には彼女を世話する侍女がいますから、わざわざAがする必要はありません。
もちろん「見てくれないか」に、「診る」と「看る」が包括されているとも考えられますが、王がAにそこまでの期待を抱いてもいなかったのかなと想像したりしなかったり。
もしかすると、書き手はそれほど考えていないのかもしれませんが、面白いなぁと思ったという話でした。
【補足】
「看る」「診る」は共に、平易な表記として「見る」という書き方もできます。
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