Column2 「油断」の由来

 今回は、「油断」の由来について取り上げようと思います。


     ☆


 ――慣れているからって、油断しないように。

 ――相手のランキングが下位だからって、油断するなよ。


「油断」という言葉は上記の例文にあるように、「慣れている事柄をする際に気を抜かないようにする」ために言ったり、「弱い相手とあなどらないように注意喚起する」ために使われたりしますよね。


 ですが、ふと「油断の由来って何だろう?」と思いました。


 漢字からは「油を断つ」ということが分かりますが、どうして「油を断つ」ことが、「気をゆるめて、注意を怠ること」(『明鏡国語辞典 第三版』より引用)に繋がるのでしょうか。


 調べてみると、次のようなことが分かりました。


**********

【油断】『角川新字源 改訂新版』

(前略)むかし、王が臣下に油のはちを持たせて、うっかりその鉢をおとした時には、罰として命を絶つと言ったことに基づくという。

**********


 何故、王が臣下に油の鉢を持たせていたのかは分かりませんが、中々無情な話ですよね。むかしの話なので、当然油は貴重だったでしょうけれど、だからってなにも罰としてそこまでしなくとも……とつい思ってしまいます。


 ですが、この話から分かるように「油断」というのは「油を断つと罰を受けることになる(それも命を絶つことになる)」ということから、「気をゆるめること」に繋がることが分かります。

 これを否定形にすることで、「気をゆるめないようにすること」=「油断しない」となるわけですね。



〇補足〇

「油断」の由来となった原文があるのは、『デジタル大辞泉』によると「『北本涅槃経』二二」によるとのこと。


 内容は次の通り。

「王、一臣に勅す、一油鉢を持ち、由中を経て過ぎよ、傾覆することなかれ、もし一滴を棄せば、まさに汝の命を断つべし」(『デジタル大辞泉』より引用)


 まさに、一滴の油が鉢を持たされた臣下の命を握っていることが分かります。

 ただ、辞書によっては「『涅槃経ねはんきょう』が由来かどうかは真偽のほどは定かではない」としているものもありました。参考までに。

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