ことば ‐Ⅱ‐

Column4 「辛党」に関して ―最新情報―

　今回は「辛党」の最新情報について、お話しようと思います。

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　先日、同時並行して連載している『割（＊1）り切れない日本語』で、「辛党」について公開しました。

　内容を簡潔に説明すると、「『辛党』とは『酒の好きな人』というのが本来の意味であるが、最近は『辛いものが好きな人』と捉える人も多くなってきている」というもの。

　元々は2022年5月に『NIHONGO －Ⅱ－』で公開した内容なのですが、投稿時期の最新の辞書（＊2）を引いたときは、『三省堂国語辞典　第八版』のみが「からい食品が好きな人」として使うことを認めており、それ以外は『明鏡国語辞典　第三版』のみが俗用として認めていただけだけでした。

　しかし、2023年10月に出版された『三省堂現代新国語辞典　第七版』を見てみると、「[意味を誤解して、または俗用で]辛い食べ物が好きな人」と記載がありました。

『三省堂現代新国語辞典　第七版』の前の版(＝第六版)にはなかったので、「辛党」＝「辛い食べ物が好きな人」として使う人たちが増えている様子や、会話などに自然と溶け込むようになってきたことが伺えます。

　とはいえ、「意味を誤解して、または俗用で」とあるくらいなので、まだ慎重な姿勢であることも確かです。会話の中で使うのは良いとしても、きちんとした文章に書くには不向きであることが感じられます。

　そのため、まだ「辛党」＝「酒が好きな人」として使う方が無難かなとは思いますが、これからどう変わっていくでしょうかね。

『三省堂国語辞典　第八版』のように注釈を付けず、「からい食品が好きな人」と大胆に語釈に書く辞書が今後出て来るのか。注目したいところです。

〇補足〇

＊１『割り切れない日本語』……　これまで言語関連の作品で取り上げた、「誤用」と「漢字の使い分け」について加筆・修正を行い、検索しやすいように五十音順に並べた作品のこと。調べた当時、手元になかった辞書も引き直しています。

＊2「最新の辞書」……ここでは「それぞれのレーベルの最新版」のことを指しています。