第2話 家族と見送り


 あれから30分ぐらいして、家に着いた。


 家は普通の一軒家、期待してドラマでよく見るでっかい家ではなかった。


「普通だな……」


「何を言ってるの?」


 お母さんは、訳のわからなそうな顔向けて問いかけた。


「いや、別に何も」


「かい、それより早く飯食おうぜ!」


 優は、めっちゃ飯を待ってる犬のように目を光らせていた。


 だから、なんでお前も食べるんだ。


 せっかくだからゆっくり家を見たかったのに……


「あれ、カイ? そういえば、俺との記憶は戻ったのに俺の家が隣なのは分かってないのか?」


「は?」


「マジかよ!」


「あら、カイ。隣なのよ優くんの家は」


 そういえば、幼馴染だったな……


 普通に忘れてた。


 普通は、幼馴染の女の子が隣の家が良かったんだか……


「さて、行くわよ」


 お母さんが、先頭に階段を上りすぐに玄関がある。


 なんだろう、嫌な予感がする。


 まだドアを開けていないのに、こちらへ来る音が聞こえる。


「ドォン!」


 ドア限界までドアが開いた。


 ドアの先には俺より何歳か下の子が目を赤くして今でも泣きそうだった。


「お兄……」


 彼女は、抱きついてくる。


「お兄!! 会いたかった」


「お兄ちゃん!?」


 俺に、妹がいたのか?


「そうだったね。記憶がないのか…… 私の名前は安良城やすらぎかんな。あなたの妹だよ。」


 こんな顔をしている俺に対して妹はまさにモデルのような顔をしていた。

 160cmぐらいだろうか……


「妹は何歳なんだ。」


 妹は顔をぷっくりとした。


「妹じゃなくて名前で呼んで」


「あぁ……ごめんかんな何歳なんだ?」


 かんなは、にっこりと元気を戻した。


「私は15歳だよ中学3年生」


 それにしては育ってるな……


 いや、どこが言ってはいない


 ただ、中学生にしては成長していただけだ。


「あの……お二人さん 中に入りませんか?」


 後ろにいた優が死にそうに体が萎んでいた。


「あれ? この女性の方は?」


「あぁ……この方は……」


 俺が言おうとしていたら彼女が自分から言った。


「私はカイさんの彼女です!」


「彼女?」


 その瞬間、妹は氷のようにカチンと凍ってしまった。


「彼女? そ……んな訳ないもん 」


「あら、かんな。ご挨拶さつしなさい」


「嫌だもん……」


 またまた顔をぷっくりとしながら俺の後ろへと隠れ出した。


 妹は俺の後ろで呪文のように呟いてた。


「なんで…… お兄の携帯監視してたのに……」


 なんかやばいこと言ってるような……


「あ…の…マジで、飯をくれ」


「ごめん、忘れてた」


 階段で倒れ込んでいた優、もう天国に行くような感じで、俺には優の上から天使のようなのが迎えに来た感じがした。


「入るか……」


 リビングのドアを開けるとお父さんが立っていた。


「おかえりなさい」


 父はほっとしたような顔をして俺を見つめていた。


 どのぐらい心配していたかわかる気がする。


 大きなテーブルにはピザや肉、和食や洋食がいろいろ置いていた。


「おぉー」俺は驚きながらも、もう一人俺より驚いている人がいた。


「飯だ!!」


 うん、だろうな……


 優は、犬のようにヨダレを垂らしそうにすぐに椅子に座り俺を待っていた。


「早く食べようぜ、冷めないうちによぉー」


「そうだな…… 」


「では、かいの退院を記念してかんぱーい」


「「かんぱーい」」


 そこから美味しい飯を食べた。


 その後、飯を食った優はソファーで寝ていたところ優の母親が隣から上がってきてすぐに一緒に帰って行った。


「おい、優。なに、お世話になってんの」


 優の母親は優よりも恐ろしいギャルママで、すごい力で耳を引っ張っている。


「え!? おふくろ!」


「早く帰るよ!千冬さん優が、お世話になりました。」


「あら、またいらっしゃい」


 お母さん同士の会話が終わるとすぐに引っ張られて帰っていった。


 彼女は、その後遅いからっと言って帰って行った。


「私も夜遅いと家族が心配するので、帰ります」


「あら、そう?」


「今日は、とてもいい日になりました。かいくんの家族と会えてとても楽しかったです。」


「またぁ、いつでも来なさいね!」


また、お母さんが照れていた。


このお母さんは何をしても照れるんじゃないか?


「そうだ、かい!送ってやんなさいよ」


「はい!?」


「彼女をこんな夜遅くに一人にさせないのよ男

わ」


そうだな……時計を見るともう8時みたいだった。


「分かった。」


「すみません……」


 彼女はちょっと嬉しそうだった。


「では行ってくる。」


 玄関を閉め階段を下り止まった。


「そういえばどこまで行けばいいんだ……」


「そうですね…… 隣町なので駅まででいいですよ」


「意外に遠いかったんだな……ごめん」


「いえ、楽しかったですし」


「なら駅に行くかって、おれ駅どこにあるかわからなかったわ……」


くすんと彼女が笑って俺もつられて笑ってしまった。


「なら、私に着いてきてください。」


「なんか、すみません」


ここは男としてエスコートしたかったんだが、まぁいいや


「そういえば、彼女目線からして俺はどうだった?」


「そうですね、本が好きな人でしたよ。真剣に本を見つめているのが好きでした。」


「本か……」そういえば記憶がないのに何気に結構知識はあるからな、それなりに読んでいたんだろ


「あとは、話が得意な人でした……誰にも話せる人でしたね」


「それじゃあ、今とは違うな……」


「そうですか? 私はいつもとおんなじだと思いますよ。あ、そうだ。

もし、何か悩んでるのならコーヒーを飲んでください」


「コーヒー?」


「そうです!あなたは何か悩んでいたらコーヒーをのんでみなっと言ってました。」


 意外だな、そんな人だったんだ、今は優との記憶しかないからただの何もできない男だと思ってた。


 そのあとも彼女に、自分の話をしてくれた。


 そしてすぐに駅へと着いた。


「もう、着いちゃったね。」


「あぁ… 今日はありがとう。退院祝いに付き合ってくれて」


「本当にいいんだよ。じゃあ… ここまででいいよ。ここまで連れてきてくれてありがとうね。あ、そういえばメール交換しよう」


「あぁ…じゃこれね」俺はQRコードを見せて彼女に見えるように携帯を彼女の方に向けた。


彼女は、嬉しそうに携帯を乗せてコードを読み取った。


「ありがとう!じゃあ、また今度ね!おやすみ」


「おう、おやすみ」


 そのまま彼女は、後ろ姿を見せながら走って駅へと向かった。


 俺も家へと帰るか…


「あ、そういえばなんでメール持ってないんだろ?」

 

 

 


 

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