第4話
「魔法とは手段じゃ。幸せになるだの手段じゃ。」
「幸せになるための手段?」
家にいた時、魔術は家族であるための資格だった。だからどうしても、その資格を手に入れたかった。
「良いか? 己の子供に魔術が使えぬからと放り出したり、捨てたりするバカがおる。それは、間違っとる。そこそこの幸せを得られれば、余りは周りの人間に分けるもんじゃ。」
目から鱗が落ちるとはこのことだ。前世、己の欲望を最大化させ、それを叶えることが幸せだと思っていた。
「幸せの基準は自分で決めればええ。金がなければ幸せじゃない? 魔術が使えなければ幸せじゃない? そんな条件糞食らえじゃな。」
やばい、涙出てきた。前世の自分が幸せになれなかったのは、周りがいう幸せを盲信していたからだったのか。俺がバカだっただけだ。
「さて、魔法の訓練に入るぞ? まずは座りなさい。」
「は、はい。」
僕はソファーに座る。
「目を閉じて、周りの音を聞きなさい。聞こえた音は全部、頭の中で再生しなさい。」
目を閉じる。周りの音を聞く。鳥の囀り、魔物の鳴き声、風の音。聞こえた音を頭の中で流す。
音の方向の違いに気づく。鳥の鳴き声は9時方向。魔物の鳴き声は四時方向。風は2時から7時へ向かって流れている。
11時方向。随分遠くから雷の音が聞こえる。自分の呼吸する音も聞こえる。
いつのまにか、目の前に球体が現れていた。そこには、僕を中心とした世界が広がっている。
「なに、今の?」
「こりゃ。まだ目を開けてはいかん。やり直しじゃ。」
「はい。師匠。」
瞑想と武術を繰り返す日々。それが二年過ぎた頃。僕の体に異変が起きた。
「師匠。ゆらゆらしているものが見えるのですが!?」
「見えたかの? それは魔力の素となる魔素じゃよ。見えるようになったなら、集めてみるとええ。」
僕は魔力を手でかき集める。だけど、魔素は僕の体をすり抜ける。
「ふぉっふぉっ。ロランよ、魔素に願うのじゃよ。我が手に集まれとな。」
師匠の手のひらには魔素の塊ができていた。
「すごい! やってみます!!」
僕も師匠がやった通りにマソに願ってみる。
「ううっ。小さいです。」
「ほう! 一度でそこまでできるとはの! これからは、それも訓練に加えるかの?」
それから、一年かけてマソを自由に集める訓練をした。
「そこまで自在に集められれば、あとは簡単じゃな。ロラン。このような水の玉を想像してみ。頭の中で同じものをオメー時するんじゃよ?」
僕は何度も師匠の水の玉を見て頭の中で想像する。
「わ! 水の玉が! あっ!?」
水の玉はあっという間に壊れて僕の手を濡らした。
りおめでとう。初めての魔法じゃ。」
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