第10話(クライマックス前マスターシーン)

_____あなたたちが向かう少し前のことだ


男性が満身創痍で槍をふるっている


肩で息をして、反撃すらおぼろげだ


何度目かの槍が振るわれる


「もう諦めたら?獣くん」

「…」

「君、意外と強情って言われない?」


目の前に立つ人物ーーーこのセルのセルリーダー、長鮫透子は、触れることなく、男性を吹き飛ばす


「がッ!?あ…かはっ、けほっ…」


床に無様に転がる彼を、彼女は嗤いながら見下ろしている。


「たすけてって、あの子たちに言えばいいのに」


「ーーー死んでも言わん『タスケテ』などと」


男性は槍を強く握りしめる。


「あいつらの人生に、オリジナルという重しはいらん」


肩で息をして、襲いかかる目眩をいなす。


「俺の知らんところで、生きろ、生き延びろ、生まれてしまった以上、アイツらの人生だ、それを、阻害するまねはしない…」


口に溜まった鉄錆を一度吐き出し、左手に槍をつがえ、右手を床について息を吸う。


刹那、放出された雷が彼の髪を逆立たせ、空気を伝播し、空中を黒ずんだ雷が空気を焼いた。


雷鳴を纏う槍は、少しずつひび割れていく


「俺のリミットが来る前に…必ず、勝利を」

「いいね、キミの覚悟、槍ごとへし折るよ」

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