第29話 隠れていたから。

 雷斗side


──ずっと知らなかった感情だった。


 流架がいないと寂しい。


 あの気持ちが恋だと思っていた。


 ずっと近くにあったのに。


ーー


 海里side


「おっはよ~」


 そう言いながら、僕はクラスの中に快凪くんを見つけた。


「おは。成功したん?」


 快凪くんがらいくんを見ながらそう言った。


「ああ」


 そんならいくんの言葉に疑問に思って、僕は聞いた。


「成功ってなんのこと?」


「...告白」


 あれ、ちゃんと考えてくれていたんだ。


 それが嬉しかった。


「らいくんも快凪くんに相談していたんだ...!」


「そーだよ。二人揃って相談するから、もどかしすぎんだよ」


 そう文句を言いながらも快凪くんが、僕たちを祝福してくれたのが伝わった。


ーー


「なあ、次は流架に言おうぜ」


「いいよ~」


 流架くんへのわだかまりが解けた今、もう流架くんへの憎悪が無いのが嬉しかった。


「おーい」


 らいくんが流架くんに話しかけた。


「何~?」


「あのさ、報告」


「お~、ずいぶん突然だね~」


 流架くんの口調はなんか察しているのか、陽気なノリだった。


「海里と付き合うことになった」


「へ~、おめでと~」


 シンプルに祝う。


 いつもの流架くんだけど、この距離感が僕にはちょうど良かった。


「流架くん、ありがと」


 僕は、どうしてこの言葉を選んだのかはわからないけれど、純粋にこの言葉が僕の心情に当てはまった。


ーー


「ねえ、朔くんにも言っていい?」


「ああ。いいよ」


 その言葉を聞いてすぐ、僕は朔くんの真後ろに立った。


「朔く~ん」


「うわ、突然後ろから声かけないでよ。目が覚めちゃうじゃん」


「だから、起こしてあげようと思って」


「ひど~」


 朔くんともいつも通りの会話のままでも良かったけど、らいくんのさんに挨拶しないとね。


 マウントを取りたい気持ちがあったから。


 らいくんと朔くんの間に何があったのかは知らない。


 でも、言っておきたかった。


「らいくんと付き合うことになりました!」


「へ~。おめでと」


 朔くんは、この世の全てを知った人のような顔をしていた。


「サンキュ」


 らいくんの言葉が、朔くんへの未練を感じないように聞こえて、嬉しかった。


「ねえ、海里。今年のミスコンは出るの?」


 朔くんがそんな風に聞いてきた。


 イケメンをきそうミスコンと(女装した男子が)一番の美少女をきそうミスコンで二つに別れている。


 こういうのは男子校ならではなのだと思う。


 朔くんが言っているのは、美少女をきそう方だろう。


 僕、“かわいい”もん。


「僕は────」

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