第26話 デートだから。
??side
──やばい。
泣きそうなあの顔を“かわいい”って思ってしまった。
そして、、、俺以外があいつを泣かすな。
そんな嫉妬と憎悪が俺の中から産み出されてしまった。
ーー
海里side
「らいくん...?」
いつもの帰り道、僕はらいくんに声をかけた。
「あ? 海里、どうかしたか?」
「ボーっとしてたからどうしたのかなって」
「あ~、悪い。ちょっと考え事してたから」
らいくんの顔が真顔だった。
よほど深い考え事でもしていたのかな。
「そうなんだ」
「なあ、海里。ちょっと何か食べにどこかに寄ろ?」
なんか決意したような顔だったから、気になったけど、らいくんと
「いいよっ」
「じゃあ、どこがいい?」
いつもよりらいくんが優しい気がした。
それに甘えたくなって、我が儘を言って見ることにした。
「う~ん、せっかくのらいくんとのデートだし、あっ、あそこがいい」
僕は美味しそうなクレープ屋さんを指差した。
デートで合っているよね?
何にも言われなくて、戸惑われるとこっちが恥ずかしくなって、顔が少し赤くなっちゃった。
「あ、ああ。何味がいい?」
「う~ん、いちご! らいくんは?」
チョコとも悩んだけど、いちごにすることにした。
「りょ~かい。俺は、チョコかな」
らいくんは、僕の心を見透かしたような顔で言った。
「買いに行こ!」
これ以上、僕の心が一方的に見られた気分になりたくなくて、そう言った。
「あっ、俺が奢るよ? デート、なんだろ?」
そのスマートさがずるい。
僕がデートって言ったのを突然持ち出して。
そんな意地悪な表情で。
ずるいよ...。
「あ、ありがと」
僕はもっと赤くなちゃった。
「いいえ~」
らいくんは何もなかったように笑いながら言う。
もう少し、、僕の気持ちを見て。
そんな、矛盾した我儘な気持ちが出てきた。
「海里、ど~ぞ」
クレープを僕に渡しながら、らいくんは片手でクレープを食べた。
「ありがと~」
僕は、満面の笑顔でクレープを受け取って、食べた。
僕は口が小さいから、らいくんみたいにすぐ食べ終われない。
「海里、これ食べるか?」
僕がらいくんを見ていたからか、らいくんのクレープを差し出してきた。
「うん! やった~」
僕は、チョコ味も食べたかったから、パクっとらいくんのクレープを食べた。
「らいくんも僕の食べる?」
そう言って僕は、自分のいちごクレープを差し出した。
あーん、してほしいな。
らいくんは、少し戸惑った顔をしていた。
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