第25話 お兄ちゃんの弟だから。

 ??side


──


 と思っていたのに。


 こういうときだけ鈍いやつなくせに。


 バーカ。


ーー


 海里side


「ねぇ、海里は、雷斗に告らないの?」


 快凪くんとの話を終えて席に座ったら、朔くんにそう聞かれた。


 その問の答えはすぐには出てこなかった。


 しばらくの沈黙の後、僕は言った。


「分かんない...」


 それしか言えなかった。


 らいくんのことが好きだって気持ちは大きいのに、、、。


──らいくんは流架くんのこと好きだから告白したら、迷惑がかかる。


 そんな僕の気持ちが邪魔する。


「そっか」


「うん...」


 今の僕はこんなことしか言えない。


 はっきりと『らいくんに告白する』って言えたらどんなにいいんだろうな。


 僕はいつも元気で、ポジティブに生きたいのに、、、らいくんを想う気持ちも邪魔する。


「朔くんはさ、藍斗先生のことが好き、、、なの?」


「っ...。違うっ...」


 朔くんは図星だと自白するような顔で言い訳をした。


「本当に違うの?」


 そう聞くことしか僕はできなかった。


 知ったからと言って協力もしないだろう。


 そして、ただ知ってどうなるんだろうなと一人考えているだけ。


 僕は、、ズルいから。


 話をそらしても僕はモヤモヤがなくならないし、自分勝手に考えるだけ。


 確証がほしいって言うただのわがままだろう。


 お兄ちゃんと朔くんは“生徒と教師”。


 叶えることが出来ないのかもしれない。


 叶えられるなら叶えてもいいのに、とは思うけど。


 お兄ちゃんは生徒を恋愛対象にすることはないかもしれない。


 けど、お兄ちゃんはチョロいと思うよ。


 少しの言葉や行動で簡単に動かされる。


 なのに、根は真面目で、何でもできる。


 そんなお兄ちゃんが大嫌いで大好き。


 矛盾しているけど、やっぱりお兄ちゃんの弟で良かったなと思えるんだ。


 お兄ちゃんの僕に対する溺愛度は、伝わるから。


「そんなわけ...ある、のか、、俺、藍斗先生のこと、好きなんだよ」


 長い沈黙の後、朔くんはそうはっきりと言った。


「やっぱり」


 そう思うことしか出来なかった。


「俺さ、海里がズルいって思うから、海里のことを応援することは出来ないよ」


「そうなんだ...」


「だから、俺のことを応援しようとか考えなくていいよ。“教師と生徒”だから、考えちゃうでしょ」


「うん...。分かったよ」


 僕は、このいびつな関係に意味があるのかはわからない。


 けど、僕は朔くんへのモヤモヤが取れたから、少しスッキリした状態で授業を受けることができたと思う。

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